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総合医 [医療]

総合医育成を目指してNPO法人JAMEPを運営しているが、ようやく総合医の必要性、今日の医学教育の問題が一般社会にも意識されるようになってきた。NHKで「ドクターG」という番組が放映されているが、いいことだ。

この問題の背景には日本の医学教育では臨床教育の観点が不足していることと、卒後教育が総合性を軽視して専門分野に一気に入り込んでしまうことだ。一言でいえば患者本位の教育がされていないということ。その最大の原因は「大学医局制度」にある。医局は総合性より専門性を追求する集団であり、論文への傾斜が強いため、ゼネラルな視点から病気を診る教育を疎かにしているということだ。

患者が診断を受ける際にどこの疾病かわからないわけだから、全人的視点から患者を診なければならない。しかし、部分的な専門家として育成された医師には自分の専門にかかわるところしか見られないために、一人の患者で何人もの専門医(学会上の専門医ということではなく)が関わるか、検査漬にして結果を見て診断することになる。

多くの欧米諸国では家庭医(かかりつけ医=総合医)がまずは診断し、場合によっては専門医へのコンサルを求める、という流れになっている。さらに高度な治療が必要な時にも家庭医療学専門医を経由しなければならないシステムになっている。制度的に総合医であることが認知されているわけだ。

他方、日本では総合医の役割は多くは開業医が担うことになるが、残念ながら総合医としてのキャリアを全く経験していないといっても過言ではなく、極論をすれば医師免許を持った偽医者と言われても言い逃れできないようなケースもある。なぜなら、それを誰も教えることもせず、検査漬けでその場しのぎをしているケースが多いのが実態だ。

その結果起きていることの一番大きな問題は医師不足に拍車をかけているということだ。専門しか知らない医師は狭い分野しか対応できないので時には複数の専門性を持った医師によって一人の患者を診察することになるから、それだけ多くの医師が必要になる。今日医師不足が社会問題として騒がれているが、実は医師の絶対数ではなく、システムの問題になっている部分もある。

今日治療は病院でも診療所でも初診料さえ払えば自由に選択できるが、この制度を続ける限りは地域医療を守る役割を担うはずの診療所が地域に根ずくはずがない。多くの欧米諸国のように家庭医を経由することが制度化されればおのずから総合医を志向する医師が増え、地域医療ネットワークの中で医療を支える診療所が登場するはずだ。そのような役割分担が出来れば、医療の無駄遣いも減少するし、医師不足を緩和させることにもなるはずだ。

また同時に医師不足解消のためにも主治医制からチーム医療に変えなければならない。今日ICT時代を迎え患者情報が手軽に取り出せるようになったので、主治医だけが患者情報を占有しているわけではないので、誰でもが治療の継続性を持ちながら患者を診ることが出来るようになった。多くの医師に病態を診てもらえるメリットもあり、今やチーム医療時代を迎える条件が整ったといえる。しかし日本では患者が主治医制を望む傾向が強いが、一人の医師ではなく病院に治療を預ける感覚が必要ではないだろうか。その方がむしろ属人的な医療ではなく、システムとしての医療を受けられる可能性が高まり、また有限な医療サービスを多くの患者が享受できる時代にしなければならないと思う。
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