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シッキムからカンチェンジュンガを目指す⑧ [カンチェンジュンガ2]

クチュルンからチョカへそしてユクサムへ (5月8,9日)

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シャクナゲに囲まれたクチュルンの小屋からは往路で経由したゾングリには登らず、目の前の谷に沿って下山する。この先のトレイルはゾキョが歩くには危険があり通過できない場所があるのでゾキョとは、ここで別行動になる。ゾングリ経由での下山になる。君たちご苦労さん!と声をかけたくなる。

7時半出発。シャクナゲの群生は相変わらず、ヒマラヤスギも高く茂って木漏れ日が時々差し込んでくる。足元を見ると苔むした緑の絨毯になっている。トレイルはほとんど水平、快適そのもの散歩と言っても良い。2時間ほど森林浴を満喫し、色とりどりのシャクナゲを目に焼き付ける。
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急降下が始まった。沢が入り込んでいて水場まで下り、そしてその先は再び急登、その先は水平トレイルに変わる。風もない、我々の歩く足音以外には鳥のさえずりが美しく聞こえてくるだけ。鳥のさえずりにウットリする。時には目と鼻先にある枝に止まっていることさえあった。
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我々より先に出たフランス人ご夫婦とは何度か抜きつ抜かれつで移動する。彼らはシッキムの森林の植生に関心があるようだ。珍しい宿り木や花、こけを見つけるとビデオとデジカメに納めている。

何回か切り込んだ沢に下りては登るを繰り返し、再び水平のトレイルになる。

左右の風景が気がついてみると平坦な森林になっている。もうすぐ往路のトレイルと合流するピランだ。ピランではこれからゾングリに向かう数パーティーの白人達が登りに備えて一息入れていた。ふと気がついてみるとゴチェラのピークまで一緒した犬が再び登場だ。どこにいたのだろう。偶然にしてはあまりにも偶然すぎる。
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腰を下ろして一息入れているとガイドがマサラティーを持ってきた。それはガイド仲間からの差し入れだった。

クチュルンでは朝日が差し込んでいたのに、雲が垂れ込めてきた。静かにしていると一寸肌寒さを感じる。ここからチョカまでは1時間程度の行程になる。

ここから先のトレイルは広く、木で作られた階段で整備されている。この一帯の土質は粘土質なのか雨上がりでぬかるんで歩きにくい。そのためにこのような整備が進んでいるとガイドが言っていた。遙かかなたにユクサムの集落が霞んで見えた。
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トレイルが急な下りになって下を見るとチョカの集落が見えた。風に乗って家畜の臭いが漂ってくる。いよいよ人里だ。ホットすると同時に何となく心惜しい気持ちになる。

駆け下りるように下るとトレイルの左右に山小屋がある。行きでは左手にあった小屋に泊まったが、テンジが聞きこんだ情報で多少グレードが高いと思われる右手にある小屋に入る。トレイルを挟んで反対側の小高いところには5張りのテントが張られていた。そこにはこれからゴチェラを目指すトレッカー達が右に左にと動いて忙しげにしている。

雲行きが怪しい。遠雷の音が聞こえてくる。チョカはチベット系の住民だ。ネパールから一緒したテンジもシェルパ族ではあるが、元を言えばチベットからの移民だから、チョカの住民とルーツは同じ筈だ。しかし、感覚的な印象にとどまるが明らかに相違を感じる。フレンドリーな雰囲気にはほど遠く人を寄せ付けない堅い印象だ。シェルパ族の人なつっこさとは大違い。

夕方には遠雷が激しい雨脚と頭上の雷に変わる。部屋から食堂までは庇のない外を走って移動しなければならない。部屋は真っ暗だった。ヘッドライトをつけて机に向かう。しばらくしたらコックがローソクを持ってきて火をつけてくれる。今晩は久しぶりに食欲が戻ってきている。

食事前にポップコーンが出た。実はポップコーンには今まで興味を覚えたことがない、野放図なアメリカ人が連想されて嫌悪感があった。理由はないのだが、歩きながら頬張って食べる、いわゆるお行儀の悪い象徴だったからだろうか。それと好きになれないヤンキーの所行とダブルからかもしれない。なのに空腹感が戻った今ではそんな理屈はどこかに。結局は生まれて初めてポップコーンを頬張りながら塩のきいた食感を味わった。
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ドアが開いて小屋の主人とその後を白人の女性が入ってきた。30前後の秀麗で知的な女性だ。これからゾングリを目指すらしい。お一人ですか、と尋ねると、2人で計画したのだが、相棒が体調を崩したため1人になったそうだ。確か、シッキムのトレッキングは単独は許可されないので、彼女が一人である理由が理解できた。彼女はボストンでバイオ関係のロイヤーだそうだ。なるほど秀麗で知的なはずだ。東京にも数回来たことがあるとか。でもどう見ても信じられない。こんな知的で上品は若き女性が単独でトレッキングとは・・・・・。

激しい雨と雷が通り過ぎていったようだ。表には月明かりが射していた。

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ここからユクサムまではたやすいハイキングに近い。小屋前ではゾキョ使いが3頭のゾキョの背中に鞍を丁寧に載せている。ゾキョは昨晩の雨の中でも野外で野宿をしていた。ゾキョ使いが泥の付いた背中を手で丁寧に払っている。単なる家畜ではなく、愛情で繋がった家族なのだろう。

チョカからの展望は限りなく広がっている。遠くに見える山塊の稜線近くに見えるペリンの街、さらに視界のきく夜なら遠くにダージリンの明かりまで見えるそうだ。残念ながらそんな視界ではないが、頭の中にある地図にインプットされた。
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7時過ぎには小屋を出る。再び数十メートルはあるだろう木々の中をゆっくりを高度を下げながら先に進む。トレイルは十分すぎるほど広く整備されている。昨日まで何気なく我々と行動をともにしていた三毛の犬の姿は見えないが、真っ黒な犬が入れ替わって前後を共にしている。

美しい建物があった。FOREST BED HOUSE BAKKIHMと表示がある。政府機関の建物。ここは9000フィート。風もなく静かな空気を劈くように突然鳥の声が轟いた。近くで鳴いているように思えたが、姿形はない。再び聞こえてきた。ようやく鳴き声の場所を確認。遠くなのに目で確認できたのでかなり大きい鳥であることが分かる。
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ここは鳥の天国ではと思うほどいろいろな鳥のさえずりが聞こえてくる。ヒマラヤのあちこちをトレッキングした経験とは違った世界が広がっている。季節の違いが理由かもしれないが。

右手の谷はますます深く、遠ざかっている。鼻歌交じりでの下山は疲れた身体には助かる。8時半吊り橋を渡る。途中大木が倒れてトレイルを塞いでいた。腰ほどの高さの幹をよじ登り先に進む。ゾキョ達はさすがに先に進めないので右手の藪の中を進んで回避していた。

十頭のゾキョが立ち往生していた。どうしたのかとテンジに聞いた。彼も状況がすぐには分からなかったのだが、一頭のゾキョが歩けない状態になってしまったようだ。病んだゾキョの荷物を下ろし、他のゾキョに分散させる作業をしていた。
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食べてはいけない草を口にしたらしい。そんな淺知恵なのかと不思議に思ったが、きちんとしっかりした餌を与えていれば体力も付き、多少のトラブルも絶えられるし、そんな草を口にしないよ、きっと飼い主がゾキョを大事にしていないからだ、とガイドは言っていた。そんなこともあるのかと半分は信じるもののさてさて・・・・。
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大きな沢に吊り橋が架かっている。上部には滝が落ち、橋下は滑になっていて見るのも恐ろしい。ここで一息入れる。沢で食事をしているグループもいた。一息入れるには恰好の場所になっている。ところがそれも原因の一つだろう、何人もの人が渓谷に滑落して死亡しているそうだ。滑伝いに下を覗きに行ったインド人が滑落、それと写真を撮ろうとした人・・・・。下を覗きたくなる魔力が潜んでいる場所ではある。

10時過ぎには霞んだ先にユクサムの集落が視界に入る。いよいよトレッキングの終着が近い。あと1時間半ぐらいでユクサムに着く。
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12時前にはユクサムの集落の外れに着く。トレイルの両側は耕作地になり、人里の香りも漂っている。右手には私のゾキョ使いの家があり、すでに荷物は到着済みになっていた。あとでロッジまで届けてくれるそうだ。道の両側には白い幟がはためいている。幟はこの地方を治めていた旧王族の一人が亡くなったその霊に対する弔意を表しているそうだ。いつまでかと聞くと、幟が傷むまでと言っていた。
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往路で泊まったロッジで久しぶりのシャワーを浴びてすっきりとなる。昼ご飯をこの集落一のホテルでとることにする。ホテルはあまりにも当地では突出した景観だ。見方によっては一寸浮いている感じもあるが、2年前に出来たばかりのリゾートタイプ。そこで食べたカレーは久しぶりに口にあった味付けで食欲も一気に回復してきた。ロッジに帰ってベッドに横になるとあっという間に夢の世界に入った。

現地のガイド、コック、ゾキョ使いとは今晩が最後なので夕食を一緒して感謝の意を表することにしたが、コックからはそんなことはどうでもいいのでチップさえ貰えればいい、と言うことになった。確かにネパールでのトレッキングの時とは違ってキッチンボーイとも話すこともなく、近くで存在を実感することもなかったので、こちらもドライな気持ちになってチップを手渡して別れる。

夕方になると強烈な風と雨が襲ってきた。突然停電だ。夕方の停電はネパールでは日常茶飯事だが、インドもそうなのかと諦めて天候の回復を待つ。コックを除いて現地ガイド、ゾキョ使いとは連絡が付いていないので予定通り来るのか不安になったが取りあえず待ち合わせを約束したバティーに向かう。その時には雨も上がってくれた。ところがバティーに向かう途中で先ほどの夕立で大木が倒れて、電線を切断していた。これが停電の原因だったことが分かった。今晩の復旧は難しい。

バティーにはすでにみんな来ていた。地ビールで乾杯し、感謝の意を伝える。しかし、どうも落ち着かない。一緒に生活した実感がない仲間なので、親近感も沸かないし彼らから見ても単なる仕事発注人でしかないことが分かった。それと私と彼らを仲介してくれたテンジがすべの窓口であったからかもしれない。

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