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シッキムからカンチェンジュンガを目指す⑤ [カンチェンジュンガ2]

チョカからゾングリへ (5月3日、4日)


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今日はゾングリ(4020M)まで高度差約1000Mを一気に登る。しばらくは整備されたトレイルを着実に高度を稼いでいく。ヒマラヤ特有のシャクナゲが点在するようになる。残念ながらすでに花は咲き終わっていて色褪せた花びらが残っているだけだ。これから高度を上げていくと丁度開花中のシャクナゲが見られるらしい。これからが楽しみだ。

何度も来たヒマラヤだが、いつも冬期に来たのでシャクナゲの葉を見ながら、咲き乱れた美しい光景を想像するだけだった。今回は花が美しいヒマラヤを堪能できるはず。

日本の山と錯覚しそうな中を淡々と進む。出発時は青空ものぞく好天だったが、空を見上げたら高曇りになっていた。1時間半も歩いただろうかフラットな場所ピラン(3600M)に出る。そこには多くのトレッカーが一息入れている。ティーを飲むもの、ビスケットでお腹を満たしているもの。この先の登りは今までとは違って急登になるそうだ。
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復路では今日目指すゾングリを経由せずにコクチュンから直接ピランにトラバースし下山することになっている。周辺に目を向けるとシャクナゲの木が増えている。いよいよ群生地に入ってきたようだ。今が見所というシャクナゲの花も増えてきた。一息入れてからゾングリを目指す。
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遠雷の音が聞こえてくる。雲もだんだん重く垂れ込めてきて、嫌な予感が頭を過ぎる。出発して間もない頃から雨が降り始め、あっという間にみぞれ、そして雪に変わって行った。まさかの雪に冬用の手袋はザックの中で出すのが大変だ。それを取り出す手間をサボって今まで着用している軍手で歩行し続ける。5月といっても雪となれば手は凍てつき指先の感覚が麻痺してくる。どうしようか、あれこれ悩んでいるうちに昼過ぎゾングリ(4020M)に到着した。
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冷え切った身体と天候のこともあるので山小屋に泊まることにする。天気が良いとテント生活は快適だが、悪天の時には山小屋があると助かる。早速濡れた着衣を着替えてシュラフを出して中に潜り込む。なかなか身体が温まらなかったが、いつの間にか一眠りしていた。

外から異常に明るい日差しを感じて目を向けると、さっきまでの雪が嘘のように快晴になっている。水たまりに鮮やかな水色のおおるりが数羽飛来している。濡れた土の中をつついたり、枯れ葉の中を啄んだりしている。慌ててカメラに望遠を付けて撮影した。小さな木の下ではピンクが入った一寸小振りの鳥もいた。インターネットで確認したが、おおるりの雌らしい。
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すっかり天気も回復したので、待機しているトレッカーも動きが出てきた。正面の稜線上をピークに向かって登るもの、近場で散策する者などなど。私はガイドとカンチェンジュンガが眺望できるゾングリ・ピークを目指すことにする。
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雨上がりの快晴は水蒸気が上がるまでなら空気がクリーンで山の眺望には最高だ。目の前の稜線を登っていくと谷を挟んだ向こうにラトン、カブールが見える。懐かしい山だ。3年前にはその山を反対側から望んでいた。そして「あのパスを越すとインドに通じている」と聞いたことを思い出した。まさにそのインドを今歩いているのだ。さらに目を右手に向けるとカンチェンジュンガがくっきりと屹立してる。
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スンパティというお線香の原料になる木が繁茂しているので、強烈な香りを発散している。歩いているだけで抹香臭い世界に浸潤する。さらにヅピー(檜のような葉でそれを祈祷時に火にくべる)も繁茂している。ラマ教の世界の道具立てはこのような自然と密接に関連しているのだろう。
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ゾングリ・ピークで色調の変化した山を撮影しようと小一時間はのんびりしただろうか。結局この時間帯では夕日には間もあり、大きな変化は期待できない、それまで待つにはあまりにも長い、しかも少しずつ雲の流れも多くなってきたので、左手眼下に見える(まるで草千里みたいな)草原を経由して山小屋に戻ることにする。

下り始めるころには予想通り雲が厚くなり、眺望できた見事なカンチェンジュンガもカブールも視界から消えていった。山は本当に運次第。もう少しゆっくりしていたらこんな眺望も楽しめなかった。山小屋に着く頃にこれから登って、というトレッカーも何人かいたが、無念な思いをすることになるだろう。

翌日は高度順応の日なので近場をトレッキングすることになっていたが、天候も悪いので午前中は小屋でだらだらとシュラフの中に入り、ウオークマンでシューマンのピアノに耳を傾ける。天候は一向に回復する気配がないので、午後になって高度順応のためだけの近場の散策をすることになる。結局往復3時間弱のポカリ(湖)まで足を伸ばすことにする。
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明日向かうタクシンへのトレイルをしばらく進み、途中で左手に曲がってガレ場を登る。ガスがかかっているので景色を楽しむという状況ではないが、墨絵の世界、一寸幻想的な気分になる。なにしろ誰一人いない世界だ。もし自分一人だけでこの場にいたなら、と想像すると不安と恐怖が襲ってきそうな雰囲気。なにしろトレイルも明確ではないし、と言って険しさがないのでどこでも歩けてしまう。山登りで遭難しやすい条件は揃っている。ポカリを一回りして山小屋に向かう。
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耳たぶをほんの僅かな風が過ぎるだけでヒューヒューと耳奥に響く。全く無風と言っても良く、普通なら無音の世界なのに、一寸した空気の移動が音になって伝わってくる。それだけ静寂だということだ。

地元のガイドに寄れば、今年の春先の天候は異常続きだったらしい。普段なら3月は雪が降るのにほとんど降らず、例年なら5月は安定した天候になるのに今年は珍しく雪が降るという、異常続きと言っていた。氷河の後退など様々な異常気象の痕跡を実感するヒマラヤだが、ここでも同様な話を聞くことになった。

明日以降が今回の一番のお目当て。天候の安定を願う。
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