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バルトロ氷河とK2⑬ カンコリアからウルドゥカス(復路) [バルトロ氷河からK2へ]

8月4日(月) カンコリア~ウルドゥガス

今日も天気はいい。K2が朝日を浴びてほんのりと緋色に色づいている。ポーター達の話を総合すると遭難した登山家は中国人、スペイン人、イタリア人、ノルウェー人、韓国人それとポーターとして同行したネパール人、パキスタン人など。残酷な話だが、それでも登山家達にとっては底知れない魅力が彼らを挑発するのだろう。
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日程を短縮出来たので体力に余裕があれば、K2・BCに行く気になれば行けたのだが、さすがに心身ともに疲労の極致、一刻も早く下山したい気持ちに襲われる。悩んだ末、BCに行っても岩肌を間近に見ることが出来るだけだと屁理屈をつけて下山することにする。

7時過ぎにはテントをたたんで出発する。荷物が少なくなったので、ここでも2名のポーターが解雇された。解雇されたポーターは食い下がっていたが、いかんともしがたい。

出発時には雲が流れて、時々日差しを遮るようになったが、すでに目的は完遂しているので、天気はそこそこで結構。むしろ日差しから解放されたい気持ちでいっぱいだ。ウルドゥガスまでの行程だが、登りでは2日間かけた日程。なだらかな下りでもあり、ガイドは問題ないとのことだ。確かに瓦礫も歩行を邪魔するほどではなく、滑りさえしなければなんでもない足元になっている。

しばらく行くといつの間にか覆っていた雲が消えてかんかん照りの日差しとなってしまった。右手正面にはムスターグタワーが独特の様相で視界に入る。
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10時50分ゴロⅡに着く。耳を傾けると氷河が溶けてチョロチョロと水が流れる音が聞こえてくる。喉を潤して直ぐに出発。炎天下でかつ長時間の歩行の苦痛から解放できればとアミノバイタルの粉末とジェリーを持参したが、これは大正解だった。特にジェリー状のものは喉の渇きに有効だし、喉元を通る時の爽快感は最高だ。ここでも残り少なくなったジェリーを飲んで出発する。

斜面を見上げると大きな岩が不安定そうにならんでいる。突然ゴロゴロという音に見上げると、ふた抱えほどの岩が突然落下し始めた。慌てて躱そうとしているうちに、幸い直上にあった大きな岩で方向転換してくれたので直撃はさけられた。私の左手を一気に落下していった。事故はこんな風にして起きるのかと自然界の掟を目の当たりにした。
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後ろを振り返るとガッシャーブルムⅣが我々を見送るように全貌を見せてくれている。K2はカンコリアを離れると同時に稜線の陰になり視界から去った。カンコリアでは隠れていたマッシャーブルムが左手に見えるようになる。
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12時半ゴロⅠに着く。ここには何パーティーかのグループがすでに休んでいた。ここで昼ご飯だ。昼ご飯はナビさんの作ったバラタだ。小麦粉を丸く引き延ばしてバターを塗って焼いた物。焼きたてだと美味しいが、冷えてしまうと喉を通すのが辛い。一口二口で限界。フルーツポンチの缶詰を開けてもらって腹を満たす。
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1時過ぎに出発する。足下の状況が徐々に悪くなってくる。氷河上を流れている川も往路時よりも水量が多くなり、往路では簡単に渡れた川が、勢いと水量を増していて簡単に渡れなくなっている。ガイドが大きな石を渡してくれて不安定な石伝いに徒渉する。ところが固定されていると思った石が動いて一瞬足下を奪われるところだったが、ストックのお陰で片足を少しだけ川に突っ込む程度で最悪な状態を避けることが出来た。右足に水が入ってしまったが、大したことにはならなかった。トレイルはさした斜度もないので歩くには困難はないが、氷が剥き出しになっている所では用心が必要。一寸気が散漫になるとスリップしてしまう。
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強烈な日射は体力を一気に奪っていく。だんだんトレイルもアップダウンが大きくなり、氷河を覆っている岩も大きくなるのでトレイルは右に左に振られてしまう。

2時半前方左手の山肌にしがみつくようにして二カ所、緑が見えている。先にある緑がウルドゥガスのキャンプ地だ。視界に入ってもあと2時間以上はかかると聞く。心底うんざりの心境だ。

3時40分最後の休憩。目と鼻の先にあるキャンプサイトがなかなか到着しない。疲労困憊気味だ。足を先に進めるのがこんな苦痛とは。5000M超で空気が薄くって息が上がった経験はあったが、このような標高では初めてだ。ガイドが心配して、荷物を持ちましょう、と言ってくれた。

プライドがその誘いに抵抗したのだが、この疲労困憊にお願いすることにする。そこから斜面にへばりついているキャンプ地は砦みたいに高いところにある。ここから一気の急登だ。ストックを頼りに一歩一歩進み、4時35分ウルドゥガスのキャンプ地に着く。すでにポーター達は到着していて三々五々散って寛いでいた。コックのナビさんがホットジュースを用意して待っていてくれた。ホットジュースは戦後の貧しい時代の飲料水を連想、必ずしもいい印象ではなかったが、この渇きには最高の潤いとなった。何杯も何杯も飲み干した。
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遅い時間に到着したので、いい場所を確保が出来ない。テント場は隅っこ、何段かあるテラスの一番上になってしまった。到着してからそこまで登るのがなんと辛かったことか。
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トランゴ・ピーク、ビアフォー・ピークが夕陽を背にして黒くシルエットになって幻想的だ。まるで墨絵のよう。往路でも見た景色だが、何度見ても美しい景色だ。何十枚も写真を撮り続けた。
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標高がそれほど高いわけでもないのに今日の疲労は桁違いだ。1週間をかけての登りに加えて、昨日の12時間、そして今日も10時間の行程は肉体的に相当な負担をかけてからだろう。
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