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バルトロ氷河とK2⑫ カンコリア、ガッシャーブルムⅠBC、カンコリア [バルトロ氷河からK2へ]

8月3日(日) ガッシャーブルムⅠを目指して(5000M)

5時過ぎに目が覚め気になる天候を確認しようとテントから顔を出した。目の前には見事なK2のピークが天を突き刺すようにそそり立っている。まだ運は味方していてくれる。アラーの神に感謝!
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今日はカンコリアからK2BCに行くか、ヒドゥンピークと言われるガッシャーブルムⅠ(G1、8068M)を見るためにガッシャーブルムBCに向かうか悩んだが、今回の目的の一つである8000M超の4座見ることもあったし、すでにK2の勇姿を拝むことが出来たのでガッシャーブルムBCに向かうことにする。

今日は往復になるので軽い軽食と飲料を持って出かける。同行はガイドのシェールとミールさん。荷物はミールさんが持ってくれるので助かる。

カンコリアではいくつかのパーティーがテントを張っているが、広大なスペースに散っているので喧噪感はない。昨日やり取りしたポーランド人達も視界にはない。それぞれに所属するポーター達は地元同志なのでなにやら情報交換を蜜にしている。そんな情報から悲しい話が伝わってきた。すでに何人かが登頂時の事故で遭難したという話は下山してきた人から聞いていたが、実はその話は数人にとどまらずなんと16人に及ぶ登山家とサポーターが亡くなったことだ。

山はロマンを実現する所だが、同時に非業の死に繋がる場所でもある。ほとんどの有名登山家は素晴らしい成功を達成していながら、結果的には「本望」と言うか、「無念」という死を迎えている。昨年、フンザに行った際にウルタール・ザーに挑戦した長谷川さんという極めて有名な登山家が死んだ事を知った。惨いそんな事故があの美しい山の懐で起きてしまった、その山を感動を持ってみている自分が極めて不自然に思えた。
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7時20分に出発する。今日はほとんど空身ではあるが、往復10時間以上の行程と聞いた。K2、ブロード・ピークが昨日よりすっきり見える。本当に運の良さを実感するが、さらに厚かましく願うとすればガッシャーブルムⅠを視界に納めることだ。氷河上のアップダウンを繰り返しながら徐々に高度を稼ぐ。後ろを振り返るとK2を際だたせるように右手にある針峰が遠近感を作り、K2の左手後方にある真っ白な三角錐のエンジェル・ピーク(6858M)を従えている。
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右手にはミッテル・ピークの左手をヴィーネ氷河が合流している。この氷河の右手を先に進むとアリ・キャンプを経てゴンドゴロへのトレイルがある。正面にはバルトロ・カンリ(7274M)が真っ白な雪をいただいて、行く手を阻む形で横たわっている。今日の目的地はその手前のシャガリン・カーブ、そこはG1,G2からのブルッツィ氷河とチョゴリザ(7654M)からのチョゴリザ氷河の合流点になる。
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日差しは厳しいものの、さすがに汗だくになることはない。10時にはチョゴリザが眼前に迫る。チョゴリザの名前は日本ではスポーツ・ショップにも冠されていたこともあり余りにも有名であるが、現地の人には特別の意味はない。単に雪に覆われている美しい山だ。
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左手には氷河上に箱庭のように渓谷が展開している。氷塔の間を縫って川が蛇行しながら流れている。川は幻想的な緑色に色づき、その色が氷河の壁に同じ緑色を映している。まさに芸術作品そのものだ。トレイルは特別アップダウンがあるわけではないので、歩くには困難はないが、すでに5000Mの高度なので多少は息苦しい。
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ちょっと心配なのは前方のバルトロ・カンリやチョゴリザ方面は雲も少なく視界良好であるのに、G1のある左手には雲がかかり始めたことだ。G1は左手稜線の後方にあるわけだからこのまま目的地についてもG1を拝めるのだろうか、一抹の不安が走る。
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この一帯は今でこそ一時の政治的安定を得ているが、パキスタンとインドそして中国が領有権争いをしたカシミールのまっただ中になる。バルトロ・カンリの裏側にあるシアチェン氷河はインドとの領有権争いで激しい戦闘が行われたところ。1980年代の話。外交的にはK2一帯もインドから言えばパキスタンと中国に占領されたエリアになっている。時が時ならここをトレッキング出来なかったわけだ。
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もうじき12時になろうとしているが、ヒドゥン・ピークのG1の姿を見ることが出来ない。氷河の合流地点は直ぐそこのように見えるが捗らない。今日は空身同然なのに足は重い。5000Mという高度のせいもあるし、この1週間歩き続けた疲労が溜まっていることもあるのだろう。

1時、晴れていればG1が望める氷河の合流地点の手前に着いたが、残念ながら雲の中だ。G2の眺望を求めるとなるとさらに2時間先に進まなければならない。今から折り返してもかなり遅い時間の帰還になるのでこれ以上の前進は無理だし、この雲模様では眺望すら望めない状況だ。

1時半、覚悟を決めて昼の軽食にする。眺望を期待していた気持ちが裏切られてブルーな気分に落ち込んでいたが、なんとかムリヤリ食事をとることにする。雲は走るように左から右へと移動している。時折雲の切れ間からG1の一部と覚しき黒い固まりが見え隠れしてきた。それがG1のどの部分なのか識別も出来ない。
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ところがなんと運の良いことか、突然雲が切れてピークの一部が覗き、稜線がくっきり見えてきた。そろそろ撮影の準備と目を離しているうちにG1の全貌が現れた。なんと幸運なんだろう。ここに来てもしっかりとピークを確認できた。

2時半ゆっくりしたい気持ちを抑えて帰路につく。G1は安定して全貌を見せてくれている。後ろにバルトロ・カンリ左手にチョゴリザを見ながら左手前方にはムスターグ・タワーが見える。なだらかな下りだから楽だ。あまり時間もないので思いっきり無理をして休まずに先に進む。気がついてみたら2時間弱歩き続けていた。さすがに一休み。
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5時頃にはアリ・キャンプへの氷河を左手に見ながら先を急いでいた。前方にはK2がくっきりと天を突くように堂々と屹立している。自分の陰が右手に長く伸び始めた。日差しが落ち始めると一気に冷え込んでくる。先を急ごう。
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何度か小休止をしながら7時10分ようやくキャンプ・サイトに戻る。カンコリアにとどまっていたコック達が夕ご飯を準備していてくれた。往路7時間、復路5時間あわせて12時間の行程はさすがに空身でも足に来る。でも天気に恵まれ、最後の最後でG1をしっかり見られたのは幸運としか言いようがない。改めて幸運をアラーの神に感謝、しかし運を使いすぎて帰路で何もトラブルがなければ良いのだが・・・・。
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