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バルトロ氷河とK2⑥ アスコーリ~ジョラへ [バルトロ氷河からK2へ]

7月28日(月) アスコーリ~ジョラ(3180M)へ

集落に囲まれたキャンプサイトなので荷物には気をつけるよう指示されていた。子供なら安心だが、大人も来たりする。彼らにしてみればトレッカーは滅多にない世界への窓みたいなものだ。珍しそうに覗き込んでいく。身体に障害を持っているが故なのだろうホームレスも食べ物を強請りに来たりする。夜の気温は適当に涼しく、熟睡は出来た。ただ、出発前に引いた風邪が完治せず、薬を飲み続けているので体調が完璧ではない。それと車の長旅で三半規管が未だ正常に戻ってないのかもしれない。

5時半のモーニングコールを頼んでいたが、興奮していたのだろうそれよりも早く起きた。ナビさんの作ったスープなどの朝ご飯を終えて出発したのは7時だった。しばらくは平坦な両側に小麦畑が広がっている中をのんびりと進む。ブラルドゥ川の流れは音から見当はつくが視界には入らない。遙か遠く川の対岸には別の集落ピヒテが見える。入り込んでいる谷に沿って灌漑用水路が導かれていて、その水路に沿って緑が繁茂している。そこは人が住む最奥の集落だ。その谷を先に進むと峠越えで昨日通過した緑の美しい街シガールにつながっている。
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山がだんだん川に迫り道が険しくなる。8時にブラルドゥ川の河岸に近づき、そこからは高巻きになる。しっかりした岩なので足場には問題ないが、かなりの急登だ。足下は急峻な崖になっている。高巻きを下りると岸壁を削って作られたトレイルになる。日差しはますます強くなる。昨年のトレッキングで余りの日焼けに懲りて、今年は庇のある帽子、長袖のシャツそして当地では当然の長ズボン。顔には日焼け止めクリームを塗りたくっているので、何とか凌いでいるが、まともに受ける太陽はペースを掴んでない初日にはとても辛い。
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ブラルドゥ川とビアフォ氷河の合流地点上部を目指して徐々に下降すると、左手から白濁した川が流れてくる。後頭部の暑さは特別だ。首筋に氷が欲しい気分だ。後頭部を覆う帽子を被った砂漠のキャラバン隊の姿を思い出し、その必然性をなるほどと納得した。次回、カラコルムに来る機会があればそんな装備も検討しなければと。ビアフォ氷河はこの合流地点では気が遠くなるくらい対岸は広く遠い。さきにはモレーンが盛り上がっている。ビアフォを上流に向かうとヒスパルを経由してフンザに抜けるルートがあるそうだ。ガイドのシェールはフンザ出身なのでこのまま真っ直ぐ行きたい、と冗談を言っていた。

8時半トラフォンの吊り橋をわたる。橋のたもとで一休み。川幅は狭く、流れと流れがぶつかりあうように激しく渦を巻いている。この橋は有料(外人は200ルピー)と聞いていたが、特に徴収があったわけではない。その先はきめ細かい砂地の平坦なところ。足を蹴ると半歩は後退してしまうのではと思うほど先に進むのが大変だ。暑いうえだからいらいらする。

単調なトレイルを黙々と先に進む。モレーンの上、しかもほとんどフラットな地形なので退屈この上ない。ビアフォ氷河の先には雪を頂いた山が見えている。平坦な河川敷をしばらく進むとコラフォンだ。10時20分に到着。瓦礫、岩しかないカラコルム(黒い山という意味)でも氷河の伏流水があるところでは木が繁茂する。コラフォンはまさにカラコルムのオアシスという感じになっている。モレーンから水が流れ出し、滝をつくって川が流れている。ここは今晩のキャンプサイト・ジョラとは違って素晴らしいキャンプ地だよ、とミールさんから聞く。それを後で実感することになる。ここで昼食だ。昨晩コックさんにおにぎりの作り方を伝授しておいたので、早速今日の昼飯はおにぎりとチーズ、チャイそれと日本から持ってきたアミノバイタル。ちょっと水っぽいおにぎりには笑ってしまったが、でも嬉しいことだ。
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11時には出発。氷河の雪を頂いた山が目に入る。それはラトック(7151M)だ。岩と瓦礫一色の無彩色の世界にとても印象的だったのだが、彼らにとってはただの山に過ぎない。岩場のアップダウンが続き、眼下遙か下にはブラルドゥ川の激流が流れている。12時覆い被さるような岩下で辛うじて直射日光を避けて休憩だ。ここでドモルド川がブラルドゥ川に合流している。我々はブラルドゥ川を遡上してバルトロ氷河を目指すわけだから、目前にあるこの川をどこで渡るのかが気がかりだ。どう見てもこの先当分は対岸に渡れそうな地形にはない。ガイドに聞くと、このままドモルド川を上流に向かい、吊り橋を渡って再びこの目の前にある対岸に下ってくるそうだ。ちょっと気が遠くなる話。
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ドモルド川をずっと上流に詰めるとシムシャール、ヒスパール、中国方面へのルートがある。岩場からだんだん広い河川敷へ足を進める。日差しが堪らない。地元ではこの渓谷をジョラナラ=ジョラ渓谷と呼んでいる。12時40分に小休止。水筒を逆さにして飲もうとしたら二口でなんと空になってしまった。この暑さのなかこの先どのくらい歩くのだろうか。シェールはあと1時間程度だよ、と言った。何しろ我慢するしかない。頑張ろう!

ここまで来ると川幅は一気に狭くなり吊り橋がありそうな気配濃厚だ。対岸遠くに不思議な銀色の建物がいくつも見える。小さな四角い銀色の建物だ。そこがジョラのキャンプ・サイトだと聞いた。そこから30分ほど登っただろうか。待ちに待った吊り橋ジョラ・ブリッジ。ここまで来ればジョラはもうすぐだ。足を速めて前進。

2時20分ジョラ(3180M)に着く。鉄条網で囲まれたキャンプサイトはパキスタン軍の有力な軍人の奥さんの寄付で作られたそうだ。さっき見えた不思議な建物はトイレだった。どう見てもこの自然環境にはそぐわない異様な建物には異議を申し立てたいぐらいだ。しかも、かえって不潔な使用状況なので使用する気にならない。

一時間前から飲まずで我慢してきたので、何しろ喉を潤したい。管理小屋に冷たいミネラルウオーターがないのかガイドに聞いて貰った。残念ながらここにはコーラしかなかった。普段は全く炭酸系飲料は飲まないのだが、ここでは贅沢も言えない。コーラでも構わないので買い求める。ガイドは300ルピー(都会では2桁の値段とか)という法外な料金はけしからんと言っていたが、私にとっては命の水。この際「高いの安い」のという余裕はない。大瓶だったのでガイドやポーターとも分けてあっという間に飲み干してしまった。
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テントを張ってくれたのでそこに入って一眠りと中に潜り込んだが、炎天下ではテント内は猛烈に暑い温室状態だ。とてもじっと寝ているわけにはいかない。汗だらだらとなったので、表に出て管理小屋の前にあるいすに腰掛けてうとうとする。夕刻になってナビさんの作った鶏とコーンのスープ、チャパティーとカレー、マンゴーと珈琲の夕飯を食べる。日が落ちるまでは暑さが気になったが、日が落ちた途端に肌寒くなってきた。これなら今晩も熟睡が出来そう。

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