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バルトロ氷河とK2⑤・・・アスコーリへ [バルトロ氷河からK2へ]

7月27日(日) スッカルド~アスコーリ(3050M)へ

昨晩はホットシャワーを浴びて網戸があるので窓を開け放して,冷房も扇風機も使わずにとても快適な環境に熟睡した。
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いよいよ今日は山岳地帯への第一歩そしてトレッキングを開始する地アスコーリへ向かってジープでの移動になる。興奮に朝早く目が覚める。天気は快晴。眼下に広がるインダス川が蕩々と流れる。ほとんど流れを感じさせないほどだ。対岸までは気が遠くなるくらい離れている。そしてその先にはこれから遡上するシガール川が合流している。カラコルムの奥地とは思えない広大さだ。6時半の出発なのでちょっと慌ただしい。庭先にはチャーターしたジープがすでに来ていた。旧式のトヨタのジープはパキスタンの山岳では貴重な移動手段になっている。昨日買い込んだ食料やテントで満載になり、その隙間にここから合流した山岳ガイドのミールさんとクッキングポーター4人が乗り込む。

*ミールさんは56歳、外見では私より老けて見えるがオーラのあるガイド、彼はフンザの北部に住んでいるが、トレッキングシーズンだけスッカルドに滞在してガイドをしている。バルトロ・エリアでの経験が50回以上とのこと。ナビさんはラホールのホテルで調理人をしている。現地料理以外に中華系もこなせるコック。私が食事についてかなり神経質な要望を出していたからの配慮で選ばれたようだ。

町なかを抜けるところで検問があった。普通なら簡単に通過できるのに今回は捗らない。どうしたことか、とガイドに質すと、どうも荷物の中に闇取引の商品が隠されていると疑われているらしい。実はラマダンが始まっているので資金稼ぎに取り締まりを厳しくすることがあるそうだ。その理由はラマダン明けがイスラム教の新年に当たり休暇になる。目的はそれに備えた資金稼ぎとか。結局、運転手が幾ばくかの金をそっと渡すことで決着した。いらいらするような時間のロスと不愉快さで出足から足下をすくわれた気分になった。ガイドによればこれからも同じようなことが起こりますよ、とも予告された。

しばらく行くと道が分岐している。まっすぐ行くとインダス川に沿ってインド国境を越えてカシュミール方面に向かうのだろうか。我々は左折してインダス川に掛かる吊り橋を渡る。渡りきると徐々に高度を上げて峠越えになる。左手には見事に微細な砂の平坦な空間が続く。砂漠のようなエリアが続く。まるで鳴沙山の砂漠のように肌理が細かく美しい。
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さらにヘアピンカーブを縫って高度を上げていく。7時半峠を越えると前方の景色が一変した。ゆったりと流れるシガール川がいくつかの中州を抱きかかえるようにしてゆったりと流れている。河川敷には繁茂した緑と耕作地が広がっている。この先には避暑地として有名なシガ-ルの街がある。シガ-ルは小さな王国であった。今でもフォートが残されていて見ることが出来る。
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シガ-ル(2340M)でコックはトレッキング中の食材として生きた鶏を調達しているようだ。何軒かの店を訪ねていたが、良い鶏が見つからなかったのか、断念して先に進むことになる。左右緑の豊かな一帯を走る。道の舗装もだんだん整備不良になり、舗装工事をしているからなおさらだ。ますます乗り心地も悪くなり、ミネラルウオーターも思うように飲めないほど左右前後に揺られはじめた。
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遠くにハラモシュの北部を源として流れてくるバシャー川とブラルドゥ川が合流する地点(合流してからがシガ-ル川になる)を通過して、いよいよブラルドゥ川に沿って遡上を始める。川幅を狭めその河岸沿いに走る。ところどころ道路幅が流れに削られて車幅ぎりぎりになったりもする。緊張する場面だが、それは私だけのようだ。9時ブラルドゥ川を対岸に吊り橋を渡る。ようやく遠くに雪を頂いた美しい山が視野に入った。地元の人から見るとその山の名前にはほとんど興味がないようで直ぐには答えが出てこない。結局は無名だと言われれてあっさり終わった。日本人の感覚からは名無しなんて考えられないことではあるが、当地では普通のようだ。
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ここはダッソーという集落。道はますます悪路になり、むち打ち症にもなりそうな連続だ。左手に一段高くなったところに「ヒルトップホテル」(2480M)という看板を掲げた店がある。ここでお茶を飲んで一息入れることになる。三台のジープが駐車していたので3組のトレッカーがここで休んでいる事が分かる。ダッソーは数年前まではジープの終着点で、ここからトレッキングの開始になったそうだ。今ではアスコーリから2週間の行程でK2を見ることが出来るが、その当時だと3週間の日程になったそうだ。だからK2はそう簡単に入山出来るルートではなかった。

10時50分ビアノで吊り橋を渡って対岸(左岸)に移る。地図には渡らずに真っ直ぐ行く道もあるが、前方の橋が崩落して進入禁止になっているそうだ。正面に吊り橋の橋脚だけが目に入ったが、流れる川をジープはいとも簡単に徒渉していく。しばらく行くと平坦な場所に出る。11時10分そこはアパリグン、山奥にしては立派なレストランがある。すでに多くのトレッカーが食事をとっていた。食堂の奥には庭があり、撓わに実のなったリンゴや杏子の木の下で日陰を求めて食事を取る。のんびりと12時半まで寛ぐ。食堂のボーイがポケットからなにやら徐に取り出した。ティッシューパーの中には彼らが山で見つけてきたのだろうか、水晶やトルマリン、ガーネットなどの宝石を広げる。といっても商品として市場で流通するほど見事なものではない、掘り出したままの形状だから私のようなトレッカーにしか商品価値がないと思われた。折角なのでガイドを通じて値段交渉をしたらほんの数百円というので、彼のお小遣いにでもという気持ちで買い求めた。

急なヘアピンを登り、登り切ると直ぐにヘアピンの道をブラルドゥ川の水面に向かって下る。1時だっただろうか、この先は1ヶ月半前に道が崩壊して進めない、と車から下ろされる。道路に沿って行けないのか、と確認したら道路沿いはまだ崩落が続いているので危険だ、ということで結局高巻きをすることになる。僅かな距離だが、高巻きとなると負担がかかる。ポーター達はすたすたと先に進むが、灼熱と突然の急登だから体がついていかない。汗だくになりながら小一時間歩いただろう。ジープ道に戻ったのだが、別のジープが待機しているはずだったがその気配はない。
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改めて我がチームを確認したところなんと17人の大所帯になっていた。どこでこんなに増えたんだろうとガイドに質したら下の集落で時々車が止まっていたでしょ、その時、地元のポーターをピックアップしたんですと言われる。後ろの荷台に乗り込んでいるので気がつかなかったわけだ。
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ジープは直ぐに来た。再び荷物と17人のポーターが乗り込んで出発。ところが20分ほど走ったら再び壊れた橋に前進を阻まれる。橋が40度近く傾いてしまっている。1週間前の出来事だそうだ。歩くにも足場が滑るので橋の欄干を頼りに渡る。さして危険があるわけではないが気を遣った移動になった。

ふと冷静になって考えると、こんなに道が寸断されているのに何故それぞれの区間でジープが用意されているのか今でも理解が出来ない。おそらくこの一帯では道の寸断が日常的でその危険を想定してジープが配置されているのだろうか。両側を遮断された道にジープがあるのはどう考えても不思議でしょうがない。
このような事態になると寸断された区間を走るジープのチャーター料が一気に跳ね上がると言うことだ。チャーター料の交渉はガイドの仕事だが、トレッカーを預かっていると言う弱みがあるので、ついつい負け戦になってしまう。さっきほんの20分走っただけなのに1500ルピーも要求されたと憤っていた。ここは2800Mの高度になる。

数台待機している中の一台に乗り込んで2時半に出発したが、しばらく行くと運転手がブレーキの調子が悪いので他の車に乗り換えて欲しいという事になる。結局3時、荷物を再度積み直して出発する。あと1時間で今日の目的地アスコーリにつく予定だ。3時10分ブラルドゥ川を対岸に渡る。3時過ぎに前方遙か彼方に緑の豊かな集落が見える。そこが今日のキャンプサイト・アスコーリだ。水面近くで荒々しい川の流れが道路に押し寄せて今にも道を破壊しそうな迫力だ。3時45分川から離れて一気の登りになる。運転手がポーター達に下りて歩くよう指示した。余りにも急な登りなので軽量化する必要があった。重いエンジン音が唸りを上げて登っていく。座っていても反っくり返るような感じになる。周囲に家並みが見えたところが終着点。ゲートを開けて中に入る。そこが有料のキャンプサイトになっている。塀に囲まれているので、自然との触れ合いとかは実感できない。ホースで水は供給されている。夕ご飯前にコック達は手を洗って庭の奥に歩いていった。ガイドによればお祈りの時間とのこと。ところでガイドのシェールは?と問いただすと、私はイスマイリア派なんでしません、と答えてきた。そういえば去年のガイドさんもラマダンの断食もした振り、アルコールも密かに飲むこともあると言っていたのを思い出した。

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