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インダス川を遡行して・・ナンガパルバットとバツーラ⑮ [ナンガパルバットとバツーラ]

8月10日(金)パス-からベシャームへ

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いい天気だ。全ての行程を終えて帰路につく日を迎えた。4時過ぎに目を覚まし、しっかりとこの地方そして山々を残像として記憶しておこう。ホテルの前を過ぎるカラコルム街道はさすがに行き交うトラックはほとんど無く、静かな佇まい。ウイグル(中国)との国境にあるクンジュラブ峠に向かう街道をぶらぶらと先に進む。前方には見事なタポプダン峰(別名パスー・カセドラル)が朝日を受けて紅色に染まり始めた。その針峰に沿って左手にカラコルム街道が延びクンジュラブへ、右手にはシムシャール渓谷がシムシャール峠に延びている。
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街道の両側には開墾中の畑が広がっている。日本人の寄付で作られた小学校の表示が道路端に立っている。その先で老夫婦と息子夫婦だろうか道ばたでなにやら立ち話をしていた。軽く挨拶を交わした。親しみのある穏やかさに心が和み、意味分からずに手振りで会話を試みる。今となってみるとどこで意思疎通が出来たのか思い出すことが出来ないが、ギルギットに向かう息子夫婦と彼らを見送りに来たご両親が乗り合いバスの到着を待っている、と理解した。彼らの家族の絆が印象に残ったので写真を撮らせてもらった。街道に沿って先に進むが、スケールが大きすぎていくら歩いても景色が変わるわけでもない。バツーラ氷河からの流れに架かる橋のたもとまでで引き返す。

軽い朝ご飯を済ませて6時には車に乗り込む。ベシャームまでの距離は日本の感覚では一日行程とは思えないが、ガイドによればハードな行程になるとか。道は一部を除き舗装されているのでかなりのスピードで走っている。パス-の市街地でナシーヌさんをピックアップする。彼の実家がパス-であることは前にも話したとおり、しばらく離れる実家で家族水入らずの夜を過ごしたはずだ。昨晩お世話になったベーグさんの弟さんも見送ってくれた。街道両側にはリンゴの栽培が盛んでたわわに実っている。日本のリンゴのようにサイズは大きくなく、少しだけ赤みを帯びていた。中フンザの中心地ガーニッシュ(カリマバードの入り口の町)を通過、フンザピーク、ラカポシも望める。

そういえばパキスタンに入国してから早朝に睡眠を妨げた祈祷時間を案内する放送がフンザ地方に入ってからは一切無いことに気がつく。イルファン君に聞くと、そのような習慣はフンザにはなく、本人の自覚に任せているそうだ。若者がGパンを履き、ブルカを付けないで歩く女性、男女共学の学校、時には内緒かもしれないがアルコールも嗜む、当地でのイスラム教が我々の想像とは全く違った形であることを改めて実感する。アルカイーダに代表されるイスラム原理主義イコールイスラム教という短絡的な関連づけが大変な勘違いであることが分かった。願わくばイスマイリア派の影響力が高まってもっと平和的な社会になることを祈るばかりだ。
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10時20分3大山脈の合流する地点ジャグロットの町外れを通過。ここでスッカルドの方から流れてきたインダス川と合流して、インダス川はさらにアラビア海に向かって長い旅を続けるのだが、。ヒマラヤは緑の山をカラコルムは黒い山を、そしてヒンドゥークシュはヒンドゥー人(インド人)を殺す山を意味するそうだ。ここでカラコルム山脈とはお別れだ。進行方
DSC_2582a.jpg向左手にはナンガパルバットが浮き立つように横たわっている。ナンガパルバットを頭にして続く稜線とライコートのピークがまるで人間が横たわっている寝姿に似ているということで「眠れる美女」と地元民は呼んでいるそうだ。日差しも強くなっているのと逆光でもあるので霞みがかった視界になる。左手後方にはハラムシ(7409M)が見える。

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チラスの町の手前で左手に道路建設の重機が入って工事をしている。この工事はバブサール峠を越えてマンシェラへと繋がる道路建設現場。インダス川沿いのカラコルム街道はしばしば嵐で落石や路面崩落が起きて長期にわたって不通になることがあり、その迂回路というかバイパスとして開通が望まれている。この道が開通した暁には現在より大幅に短縮されて6時間?前後で行き来が出来るそうだ。この一帯には3世紀から7世紀頃の岩絵が点在している1時に往路で入った中華料理店(パノラマホテル)で昼ご飯になる。店内は大きな扇風機は回っているものの灼熱の気候には焼け石に水だ。
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2時に出発。チラス地方はとりわけ猛暑と乾燥地帯で、岩と瓦礫の連続だ。2時半にノーザンエリアから北西辺境州へ入る。ようやくペシャワールを州都とするエリア。3時過ぎにシャチアールの町を通過するが、町の様相が一変し女性の姿は皆無、男は白い独特の帽子を被り、黒々とした髭もじゃな姿に統一されている。スンニ派を信仰するバザールであることが分かる。この辺になるとインダス川は深い谷底を轟音を立てて流れている。街道からは垂直に切り立って落ち込んでいるので対向車と行き違う時にはひやひやする。逆光をあびて蛇行するインダス川の川面だけが銀色に輝いている。カラコルム街道は大凡1000Mの高度を水平に移動するので川面は確実に遠く深く、時にはV字峡の様相を呈する。年に数台のトラックが谷底に落下する事件があるとの話に身震いが走った。時速40KMのスピードでさえあまりにも早すぎる印象になってしまう。

徐々に岩と瓦礫だけの世界から急斜面に端正に開墾された棚田に緑が映える。4時半コーヒスタン(山々の国という意味)地方の中心地ダスを通過する。アーリア系の民族が中心で、この町もスンニ派に属する人々が多い。この地方の人々は気性が激しく、部族間での争いがしばしば、その結果殺人事件にも至ることもあるそうだ。小銃を持ち歩き、身を守るために相手を殺す、町内では法治国家だが、ひとたび山岳に入れば無法地帯となり、法の追求から逃れることが出来てしまう、緊張感が漂うエリアだそうだ。

6時15分ズビアールの町を通過。カラコルム街道も一気に高度を下げ始める。復路もイスラマバードまで陸路の移動になったが、エージェントを通じてギルギットからのフライトの予約を依頼したものの、購入できなかった。確かにどのトレッキング企画を見ても飛行機を使うスケジュールだが、但し書きに陸路への変更もあることが注記されている。余程天候が不安定でキャンセルが多いということなのだろうか。6時半ベシャームへの入り口で検問を受ける。R0011727a.jpgすでに日は落ちて闇の世界。先方に煌煌と明かりがともる町が見える。今晩の宿泊地ベシャームだ。往路は町外れのロッジだったが、復路では市街地のど真ん中にあるホテルになる。立派なホテルで土産物店もあり、部屋にはバスタブ付きで冷房も付いていた。久し振りに体を思いっきり洗い、ぐっすり眠れそうだ。
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