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インダス川を遡行して・・ナンガパルバットとバツーラ⑭ [ナンガパルバットとバツーラ]

8月9日(木)ヤシュペルトからパスーへ

DSC_2530a.jpg腹の調子が悪く、早朝に目を覚ます。テントから出ると朝日が差し込んで天気は悪くない。しかし、バツーラ連山のピークは厚い雲に覆われていて望むことは出来ない。



DSC_2477a.jpg冷気が肌を刺してとても気持ちがいい。5時に起きて写真でも撮ろうかと思っていたが残念ながらそんなチャンスは望めそうもない。6時50分出発する。今日のスケジュールは二日がかりで登った行程を一気に下ることになっている。
7時過ぎ、左手に切り込んでいる谷に向かってキャンプに水を供給している塩ビのホースが延びている。その先を見ると細い流れがあって水源になっていた。トレイルを先に進むと砂地のフラットな広がりになる。実はここは4年前に大雨で冠水しトレイルが水没、トレッカーは迂回するのに苦労をしなければならなかったそうだ。ガイドが当時のそんな苦労話をしてくれた。このあたりまで下りると木々も繁茂している。
DSC_2542a.jpg広がりを過ぎると岩場に入る。左手には垂直に見事な一枚岩が屹立している。手がかりの少ない岩なので難易度が高いだろうけど、ロッククライミングには素晴らしい岩場に思えた。
8時40分カーン小屋に着く。小屋の中は多くのトレッカーが一息入れていることもあり、下山を急ぐことにする。トレイルはフラットな地形から徐々に岩場に変わっていく。そしてそそり立つ岩に氷河が近づきトレイルの眼下に迫ってきた。




R0011593a.jpgR0011596a.jpg9時30分岩場に腰を下ろしてひと休み。天候はいいがバツーラ連山は雲のなか。岩場の道が続き、足には負担がかかる。10時30分バツーラ氷河トラバースを前に昼食をとる。

R0011607b.jpg11時40分氷河トラバース開始。すでに太陽は強烈な日差しをふりそそぎ、大地はそのエネルギーを受けて露出している氷河からは水滴がしたたり落ちている。
氷河特有の凹凸を右に左に降られ、アップダウンの繰り返しをどれだけしただろうか、氷河の上なのに汗だくになる。遠くからごうごうと言う流れの音が耳に入る。氷河が溶け出して流れが始まっている。ガイド、ポーター達はこの水を美味しそうに喉を潤して
R0011616a.jpgいる。ペットボトルに詰め込んでいるのを見たら不透明で白濁している水だ。
免疫力の違いなんだろう。そういえば知り合いの在日ネパール人が里帰りしたら水が合わなくて下痢をしてしまうそうだ。彼ですらそうなるとすれば日本人が現地に入って体長を崩すのはある意味当然とも言える。
そこから急坂を一気に登りきると一昨日キャンプしたユンズベン。1時30分バツーラ氷河のトラバースを終えて一息入れてパス-に向かう。バツーラの右岸は切り立った細いトレイルが続き緊張の連続だ。今回のトレッキングのまさに最後の行程に入ったが、疲労も蓄積し体調不良からの体力消耗も極限に来ている。相変わらず灼熱の日射を受けて汗もかくし、喉も渇く。喉を潤すミネラルも限りがあり、節約しながらになる。右手から延びている尾根を乗越すと一気に視界が広がりカラコルム街道にそってパス-の開拓中の耕作地が見える。
R0011621a.jpg白濁したクンジュラブ川(下流ではフンザ川)が蕩々と流れている。街道沿いに今晩の宿、パス-アンバサダーホテルも見える。最後の体力をはき出すように走るようにしてそこに向かう。気持ち的には飛ぶように走った。ポーター達とも競争しよう。遮るものもない一気の下りを下りて3時10分ホテル前に着く。
ホテルでは体調を崩していたイルファン君が待っていた。まずは久しく体を洗ってないのでシャワーを浴びる。今晩は今回のトレッキングをコーディネートしてもらったベーグさんの実家にご招待される。ホテルは村外れにあるので車でひとっ走りし、パス-村に。カラコルム街道から細い道を入り、集落の一角にある果樹に囲まれた家に入る。そこではベーグさんのご両親、弟さん、妹さん、一家総出での歓待だ。
フンザと言えば杏が連想されるが、一番の旬は終わっていたので手に出来なかったが、ベーグさんの庭には幸い杏子が鈴なりになっていた。どうぞもぎ取って下さい、という事で捻って手にする。そのまま囓ってみたらなんと美味しいことか。日本では杏子を果実として賞味する事はほとんど無いので期待していなかったが、想像以上に美味しい果実だった。それは水に飢えていたのと体調不良が加速させていることもあるだろうが、人工的に作られた美味しさに慣らされた我々にとって自然の中で完熟したものがいかに美味しいかを改めて教えてくれた。
日が落ちて真っ暗になる。今晩は電気の供給のない日に当たり明かりが使えない。電気の使えるのは週に数日だけだそうだ。気を遣ってもらい、発電機を回そうと何度もトライしていたが思うように作動しない。結局ローソクで明かりを作り、夕ご飯が始まる。部屋は絨毯の敷き詰められたとても綺麗な部屋だ。私とイルファン君と家族が向かい合うように座り食事が始まる。ベーグさんの父上は60代だろうか、とても精悍なしかし同時に穏やかさをたたえた素晴らしい古老だ。奥さんが膝のリュウマチだろう、歩くのが辛いのを気遣って息子が住む日本にも行くことを断念しているとか、大変な愛妻家だ。彼は料理の達人でもあった。
DSC_2562a.jpg今晩の料理はご主人の手料理だと聞いて目を疑ったが、ご馳走を口にした瞬間にそれは実感し、体調不良なおなかも大歓迎体勢になった。もりもりと久し振りの食事に箸が進む。食べ過ぎて体調を悪化させるのでは気にしながら結局は全てを平らげてしまった。こんな現地での自然な雰囲気と仕来りに接する機会をを楽しむことが出来た幸運がいい思い出になるだろう。家族総出の見送りを受けて辞去する。
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