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インダス川を遡行して・・ナンガパルバットとバツーラ⑫ [ナンガパルバットとバツーラ]

8月7日(火)ユンズベンからヤシュペルトへ
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生憎の小雨となった。幸い風がないので最悪状態は避けられたが、ブルーな気分になる。雨具を上下まとってザックにもカバーを掛けての出発となる。7時に全ての準備を整え、ヤシュペルトへ向かう。まずはバツーラ氷河に向かって下る。下りきったところが水場になっていて、他のグループの数人が水を汲んでキャンプ地に運んでいた。ここがバツーラ氷河から溶けた水がようやく地表に現れる地点になっている。水は白濁した水でとても視覚的には飲めるようなものではない。しかし現実にはこの水がここでは唯一の水源で、その水で作られた食事をとっていたわけだ。バツーラ氷河はいままでトラバースした氷河より規模がはるかに大きく横断するには手応え十分だ。氷河が剥き出しになった縁を歩いたり、押し出された岩を避けながら道をたどる。
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8時20分ようやく渡りきって対岸のちょっとした広がりのあるところで一休み。右手は岩がそそり立っている。崖を切り開いた細いトレイルを緊張しながら登ったり、ガレ場の中を、そして大きな岩を踏み越えたりの連続だ。右手には沢が入り込んでくるが、涸れ沢だ。目を上に向けても垂れ込める雨雲に視界は遮られ目に入るものは灰色の世界だけ。
ひたすら単調に歩くだけの気持ちとの戦いを続けていくうちに気がつくと緩やかな登りになり、木々が茂るフラットな地形になっていた。11時20分アリダカーンハウスに着く。この小屋の謂われは息子を失った遺族が寄付して作られた山小屋、中には中央に暖炉があって薪をくべて団欒をしている何人かの欧州からのトレッカーとそのポーター達がいた。雨で冷え切った体を暖炉の前で温める。ここの標高は3000Mだ。
R0011570a.jpg12時過ぎに小屋を出る。今までとは違って傾斜も緩く、雨期にはしばしば小さな流れが川となって一帯が湿原になると思われるような砂地がある。それを囲むように柳が繁茂している。そこを歩くとクッションが効いて快適な気分、疲れがとれるような錯覚になる。1時頃に再び氷河がトレイルに迫りモレーンの上を進む。突然ポーターが立ち止まってガイドに話しかけてきた。指を指した先の地面を見ると掌より一回り大きい土が露出している。ガイドの通訳で分かったことはユキヒョウの足跡だそうだ。オシッコをした後に後ろ足で蹴り上げた跡と聞き、仰天した。まさかユキヒョウそのものは別として生存の証を確認できるとも思っていなかった。半信半疑で話を聞いたが、ポーターの迫力に納得してしまったというところか。
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小雨も時折となり最悪コンディションにはならなかったが、雨具を着てのトレッキングではフードが視界を遮り、体はジットリと汗をかいて不快だ。周囲には低草木しか生えない環境に変化してしている。地肌が露出した斜面を登り切るとフラットな地形になった。ビニール管が一本先に伸びている。その先に目をやるとそこは今日の目的地ヤシュペルトだ。アブレーションバレーからはかなりの高度差がある高所だ。岩を積み上げた小屋がいくつかある。数組の白人の一行がすでに幕営をしていた。対岸にはバツーラ連山が雲の中。無限の天空に繋がる回廊のように氷河の末端だけが視界に入る。さっき見たビニール管はこのキャンプサイトへの唯一の水源を供給してくれている。気がつくと掲示板にその謂われが記載されていた。1959年イギリス・ドイツ登山隊がバツーラ登頂を目指して無念の結果になった際の遺族の一人バルバラ・ヒルヒシュラーの寄付で作られた貴重なものだ。トレッカーにとってまさに命綱になっている。明日の天候回復を祈る。
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