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インダス川を遡行して・・ナンガパルバットとバツーラ⑪ [ナンガパルバットとバツーラ]

8月6日(月)カリマバードからパスーそしてユンズベンへ

R0011547a.jpgホテルには当然冷房もなく、大きな扇風機が唯一蒸し暑さを解消してくれるのだが、さすがに寝苦しい。風を直接当てると強すぎるし、天井に向けると弱い。なかなか寝付けなかった昨晩だった。7時から朝ご飯。ガイドのイルファンさんが自宅に帰ったのでホテルマンとは直接のやり取りになった。英語でのやり取りが不自由なことが分かったので身振り手振りで会話を試みたが思うように繋がらず流れに従うことにする。何とか朝ご飯を終えて出発の準備をしているとイルファンさんが戻ってきた。相変わらず鼻水とクシャミをしている。彼から最終的にバツーラへのトレッキングに同行できない、山岳ガイドのナシーヌさんと一緒して欲しい、とのことになった。

8時50分ホテルを出てバツーラへの入り口パスーに向かう。山岳ガイドのナシーヌさんはパスー出身なので昨晩は実家に泊まっている。久しぶりの家族団欒を楽しんだことだろう。彼は地元でトレッキングの食材を調達してパスーで合流することになっている。
R0011551a.jpgこの一帯では一番歴史の古い町ガニッシュを通り、すぐにカラコルム街道に合流して左折する。フンザ川を対岸(左岸)に渡る。左手に長谷川恒男が挑戦したウルタル・サールⅡ峰(7388M)が天をつくように聳え立っている。1990年日本人によって初登頂された最も難しい山の一つと言われている。悲しいことに翌年彼はこの山で帰らぬ人になった。しばらく行くと岩絵が点在する。15世紀頃のものと言われ、アイベックスや侵略者の姿が刻まれている。対岸には稜線越しにフンザピークその左手にレディースフィンガーが望める。

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対岸の岩肌をくりぬくように再びシルクロードが走っている。9時35分アイナバードに入る。道は東から北に向きを変えて走る。冷房を切って外気を入れながら走る。朝だけのことだがとても気持ちいいドライブだ。正面にのこぎり状の見事な山郡が見える。タポプダン峰(6700M?)別名パスー・カセドラルとも呼ばれている。






DSC_2438a.jpg9時40分シシュカットの集落を通過。フンザ川の河岸を中心に緑が繁茂している。この一帯では道路脇に真っ直ぐに高く伸びているポプラが今までの地方とは違った風情を醸し出している。対岸に渡ると上フンザ地方に入る。10時上フンザ地方の中心地グルミットに入る。民族的にはパキスタンでは少数民族になる中央アジア系の民族が多い。肌の色は白く日本人から見るとまるでロシア人と区別がつかないほどだ。10時過ぎにグルミットの町にあるリゾートホテル・シルクルートホテルで一休み。玄関先でガイドのイルファン君がホテルから出てきた小太りの初老の老人と抱擁をして親しげに会話が弾む。私も紹介されたが、その老人はなんとイルファン君の遠い親戚で、フンザの藩主の従兄弟にあたるそうだ。ついつい手をさしのべて握手をする。
外気温はすでに高くなっていたが、部屋に入ると冷気が漂っていて凌ぎやすい。小綺麗なホテルだ。

DSC_2437a.jpgお茶を飲んでいると数人のパシュツーン人が入ってきた。イスラム教の教義がきついエリアの民族なのだが、オープンな服装をまとっている。このホテルからのパス-カセドラルは見事な景観だ。パキスタンを代表するシーンの一つとして選ばれているそうだ。ここで写真を撮りたかったのだが、いいアングルが得られなかったのでホテルに頼んで空いている寝室に入れてもらって、そのベランダから撮影をさせてもらう。左手にはグルミット氷河の末端から滝が落ちている。道ばたにはラベンダーの花が見事に咲き誇っている。果樹園もありリンゴや杏子も実を付けている。
DSC_2450a.jpg10時40分フサイニの町を通過。後方左手にはウルタル・サールが望めるはずだったが残念ながら雲に隠れていて見ることは出来なかった。11時パスーの集落に入る。パスーを過ぎて人家が疎らになった左手にあるアンバサダーホテルに入る。この一帯は50年ほど前に大洪水で多くの人家が飲み込まれた悲劇があったそうだ。今日では再びニューエリアとして開拓が進められている最中だ。氷河からの灌漑用水を誘導して耕地へと改良事業が行われている。ここで昼ご飯を済ませて、トレッキングの準備をする。先発でパスーの実家に寄った山岳ガイドのナシーヌさんが買い出しした食材を持って戻ってきた。彼は現地でのポーターを集めそれぞれに荷物の分担を指示していよいよバツーラへのトレッキング開始となる。

1時に車に乗り、ほんの少しカラコルム街道を走って、すぐに左手に折れる。数百メートル先で下車していよいよトレッキングの開始だ。
R0011552b.jpg車から下りると照り返しもあって灼熱の暑さを肌で実感。木陰に入らないととても堪らない状況だ。ここで体調の悪いイルファン君は車と一緒に引き返し、彼の故郷カリマバードで(風邪の)治療に専念してもらうことになる。
しばらくは緩い傾斜の砂地をそしてその後は瓦礫道を歩く。

R0011554a.jpgあっという間に玉の汗が額を走り拭うのも億劫なぐらいだ。滝の汗とはこんなふうなんだろうと実感した。草は多少生えているが岩と砂の世界。1時40分に歩き始めて30分ほど登った丘の上に立つ。ここからはフンザ川、その後ろに聳えるパスーカセドラル、川に沿って伸びるカラコルム街道、灌漑用水が引き込まれて縦横の道に囲まれた耕作地、見事な展望だった。

一息入れていよいよバツーラ氷河へ。急峻な九十九折れのトレイルを進む。左手には切り立った垂直の岩肌が迫り、右手はバツーラ氷河に向かって谷になる。徐々に緊張する足下になるなか、汗が額を走るたびに拭いたいが、気も抜けない緊張に苛々しながらの歩きだ。遙か下にはバツーラ氷河から溶けたばかりの水が勢いよく白濁して流れている。傾斜は緩くなったが崩れた瓦礫や砂地を乗り越えたりしながら先に進む。3時左手前方にユンズバレーが視界に入る。その先にはパスー氷河があるそうだ。3時10分に今日のテントサイト、ユンズベンに着く。バツーラ氷河の右岸でフラットな平地が広がっている。
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無人小屋もあって我々より先に二十人近くの青年達の一団がすでにテントを張って夕ご飯の用意が始まっていた。テントサイトから右手谷に向かって下りると氷河の水が手に入る。その水を使っての調理だ。彼らは地元の青年団なのか確認できなかったが、軍隊的統率もないので学校の野外活動のようにも見えた。数も多いし若いのではしゃぎ回っていたし、キャンプファイヤーを囲んで賑やかに歌声も聞こえてきた。夕ご飯を終えてテントに入って一息入れていたが、喧噪に苛々しているうちに眠りについていた。確実に厚い雲に覆われ始めていたのが気掛かりだったが。
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