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インダス川を遡行して・・ナンガパルバットとバツーラ⑨ [ナンガパルバットとバツーラ]

8月4日(土)ラトボから再びタリシンへ
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5時に起床。すでに山稜越しに太陽の光が差している。黒々とした稜線の向こうに緋色の朝日が輝くにはもう少しの時間がかかる。しかし朝方の変化は早い。あっという間に稜線を越えてくる白い雲が紅色に色づいてくる。日の出だ。今日は雲が多少流れているけれど、ナンガパルバットのピークもくっきりと太陽光を後ろに受けて聳え立っている。
ポーターたちは手慣れたテントの撤収、荷造りを終えて7時10分には出発だ。今日は一気にタリシンまでの下り。往き二日行程を一日で下りるわけだが、多少の起伏はあるが大した行程ではない。あっという間に広大な草地、池塘を通り抜け8時には小川を徒渉する。左斜面に沿ってジグザグの登りになる。その先はバジン氷河のモレーンへのダウン、そしてアップとなる。
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山の景色は原則朝早くが一番と言われるが、今日もその例に漏れずナンガパルバットのピークは徐々に雲の中に隠れていく。ここまで来るとライコートとナンガパルバットにつながる稜線はくっきり見えるが、肝心なピークはすでにブルカを被ってしまった。 氷河は足下が悪く、大きな岩の間を縫ってあるいは岩を乗り越えたり、右往左往しながら9時には渡りきる。そして再び反対側にあるモレーンを越えて平坦な山道になる。
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9時半にヘッリンコッファーに到着。荷物を担いでくれているロバがなにやらもがきながらの様子。何か異常があるのかと目をやると背中の両側にバランス良く積み込んでいたはずの荷物が片側に傾斜して歩行困難になっているようだ。ただでさえやせた体躯に頑張っているロバ君を快適な状態にして欲しいと思っていると、ロバ使いが足を折らせて佇ませた。そして背中の荷物のバランスを調整し、再び立ち上がらせて先に進み出した。ようやく自分もロバのペースに惑わされることなく前進できる。 9時50分右手に池塘を見ながら通過。パキスタンの山とは思えない緑溢れる景観に心が洗われる。右手前方に点々と人家が見える。そこはルパルの上村だ。道はいつの間にかジープが走れるほどの広さに整備されている。
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11時15分ルパルの下村にある一軒の人家に招かれた。そこはタリシンからポーター長として付き添ってくれた人の親戚の家らしい。靴を脱いで10畳ぐらいある接客ルームに案内される。絨毯が敷き詰められた小綺麗な部屋だ。そこで団欒をしていた人たちは蹴散らされるようにそこを去っていく。せっかくの団欒をぶち壊して割り込むのに気が引けたが、遠慮するなと強引に中に入った。壁に沿って座布団のようなものに座り、くつろぐ。
ここは商売で提供されたわけではないので、昼ご飯が出るわけではなく、チャイとビスケットが用意された。あまり食欲もあるわけでもないのでそれで十分だったが。小学生から中学生ぐらいの5人は好奇心があるのだろう、一緒に座ってそれぞれの個性を出しながらこっちを観察していた。歩いている時は暑く汗ばんでいたが、日差しを遮られている部屋はひんやりと快適だ。
12時半お世話になった家を出て、タリシンへ向かう。ここからはさらにのんびりとした道の連続だ。ここからはナンガパルバットのピークは稜線の陰になり、チョングラとその氷河が見えるだけだ。だんだん雲も厚くなってきた。1時にはタリシン氷河のモレーンに着く。最後の悪路だ。氷河を渡りきると一気の下りが始まる。眼下にはタリシンの集落がそして人々の行き来が目に入る。ジグザクの下りを一気に下りればもう宿はすぐだ。
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集落に入ったすぐ右手でサッカーの試合が盛り上がっていた。話を聞くと年に何回かの集落ごとの対抗戦が行われていた。その真っ最中だ。旗を振ったり、競り合いにブーイングがあったり、どこでも同じ光景とはいえこんな僻地でも都会同様な様相にびっくりした。 集落の一番端にあるロッジに2時20分到着する。ロッジで寛いでいると警察の車がけたたましく上に向かって走っていった。さっきのサッカー試合がもつれにもつれて選手同士のぶつかり合いになり村人同志の殴り合いにまで発展し警察沙汰になったそうだ。幸い怪我人が出なかったのでホッとしたが、世界各地でも起こることがここでも起きている。日本人が特別なのか、違和感を感じたシーンだった。
すっかり山は雲の中になり、何も見えない。時々雲間から稜線が覗くが視界不良だ。しかし振り返ってみると、今回も肝心なナンガパルバット北面、南面のビューポイントではいずれも天候に恵まれて望めたのは幸いだった。今まで何回かヒマラヤの山々を望むトレッキングを重ねてきたが、幸い前回のカンチェンジュンガが悪天のため至近での眺望が出来なかった以外は全て完璧な景観を満喫できている。日頃の心がけと言いたいが、この幸運を感謝したい。
庭には二つのテントが張られ、一つには到着したときにいた裁判官が未だ滞在中だった。
部屋につながる階段下で白人のカップルが困惑気に座ってなにやら話し合っていた。声をかけたらフランス・シャモニーから来た若者だった。彼らは教師で、どういう関係かは余計なお世話としてガイドもポーターも付けずに全装備を背に担ぎトレッキングをしている。その最中に女性が体調を壊し、嘔吐、発熱そして下痢ですっかり元気を失っていた。男性から薬はないかと聞かれ、持ち合わせの抗生物質、解熱剤、下痢止めを数日分渡す。俄医者(?)、偽医者といえども何とか役に立てればとの思いでした行為。無事に彼女の健康が戻ればいいのだが・・・・。
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庭先にあるテントでナシ-ヌさん手作りの夕ご飯を食べて部屋に戻る。喉の痛みがちょっと気にかかる。風邪が悪化しなければいいのだが。横になるとあっという間に熟睡の世界に。
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