SSブログ

ヒマラヤ・トレッキング=⑬カンチェンジュンガ・トレッキング(11月3日) [カンチェンジュンガ]

シレ・ラ手前のポカリからギャブラ

(11月3日)
4220Mの夜はさぞかし厳しいものと覚悟していたが、いつになく熟睡できた。ロッジ泊まりの時には寒さと呼吸困難で何度か目を覚ますことがあったのだが何故だろう。まずテントの中は意外に暖かいと云うことだ。自分の体温がテント内を確実に暖めてくれる。さらに、インナーシュラフやシュラフカバーを用意したため体温の温存に成功したのだろう。狭いという以外は快適だ。改めてテント生活の素晴らしさを体感した。

相変わらず天候ははかばかしくない。しかし雪や雨の心配はないようだ。下り中心の行程になるので今日は楽勝か。7時15分出発する。足元には雪が残っている。7時55分シレ・ラ(4290M)を通過する。いよいよグンシャに向けて下る。左手には大きく深い谷がタプレジュンに向かって伸びている。晴れていればマカルーの眺望も可能と聞いたが残念だ。シレ・ラを回ると再び雪と氷に道が覆
われている。足元を一歩一歩確かめながら緊張しながら下る。それも直ぐに消えて快調に下る。8時15分はるか眼下に流れるグンシャコーラに沿って十数件の集落が見えた。一瞬グンシャかと錯覚したが、ファレの集落だった。グンシャより一つ下流の集落。



しばらく歩くとさらにコーラの上流に大きな集落、グンシャが見えた。9時丁度4000M地点を通過。さらに下ると背丈の高い樹林帯に移る。石楠花の群生だ。ここの下りは一気だ。腰ほどもある高さの岩をストック頼りに下りたり、膝には堪える歩行だ。数組の(独りでガイドを伴った)トレッカーが行き違った。9時50分突然大きく開けた平原を通過。沢鳴りの音が耳元に近づいてきた。そろそろグンシャの町ではないのか。再び樹林の中を通り右手からの沢に架かった木橋を渡る。檜葉で装飾された橋だ。

10時15分トレイルが整備され、グンシャ(3595M)の集落の村はずれに着く。ここの集落はシェルパ族の部落。各家の屋根にはチベット教信者である証、タルチョがはためいていた。

集落に入って左手数軒先の広い庭を持つ家に入る。主人が出てきた。居るはずのダワさんが居ない。主人は手にしていた紙をバッサンに渡す。ネパール語で書かれたダワさんからの伝言だった。グンシャでは電話があるが、ビジーで通信不能なので、チケット手配のためさらに先に進む、とのこと。

多少の不安が無かったわけではないが、彼がチケット購入に成功するよう祈ることでそれを打ち消した。相変わらず厚い雲と強い風に体の芯が冷える。家の奥にある納屋だろうか、床が抜けそうな小屋の中で昼飯の準備が始まった。

グンシャはカンチェンジュンガを最も近くから展望可能なパンペマへの定住村最後の集落だ。パンペマも目指す予定にしていたが、予想以上のタフなルートだったので断念した先だ。行くとしたらここから往復で3泊4日はかかるコースだ。集落は整然とした小綺麗な町。こんな奥地に何故だろう。理由を確かめることは出来なかったが。
ところで予定外の展開にサブガイドのバッサンもナーバスになっている。自分としては水曜日のフライトに搭乗できることさえ実現できれば、後はお任せしよう。バッサンは今日の日程をどこまでにするか、自信がなかったのだろう、そこの家主と何度かやり取りして、ギャブラまで行くことになる。ここからギャブラまでは大した上り下りは無いそうだ。12時には昼飯を終えて出発する。相変わらず灰色の世界だ。

街道を先に進んで直ぐに左に曲がって大きな吊り橋を渡る。橋の手前にはチェックポストがあるのだが、何の手続きもしないで先に進めた。集落は街道に沿って先に真っ直ぐ伸びている。勢いよく流れるグンシャ・コーラを眼下にしながら対岸に渡り、直ぐに右岸に沿って左に道を取る。コーラとほとんど同じレベルを下流に向かって歩く。河岸には煉瓦色に染まったヒマラヤ杉だろうか、見事な紅葉には感動した。対岸にはゴンパがある。

日本のように様々な色に染まる紅葉とは違った趣だ。久しぶりに一匹だけの寂しい響きだったが蝉の声が聞こえた。道の真ん中に檜葉を積み上げた囲みがある。チベット教でのお祈りの場所だそうだ。

1時15分ファレの集落を通過。道に沿って数軒の家が並ぶ。我々が通過するといつの間にか子供達が近づいてきた。"ギブミースウート”と声をかけてくる。まさかこんな奥地ですれてしまった子供達に出会うとは。トレッカーの所行の罪深さを実感する。私もかつてはうっかり物を上げてしまったのだが、それがかえって彼らの心を穢して仕舞うのに気づき敢えて無視することにしている。バッサンが現地語で去るよう追い返していたがなかなか執拗だった。

チベタンカーペットを作り販売している家の前を通る。柄には興味が湧いたが、技術的にはポカラなどで購入できるレベルとは違いすぎるほどお粗末。しかもこんな重量物を買い込んだらポーターを泣かせるだけなので断念した。グンシャコーラは左手深い谷の下を流れている。そこに向かって右手、左手から滝が落ち込んでいた。美しい景観だ。

1時45分ファレの集落外れにある掘っ立て小屋で小休止。そこを過ぎると一気の大下り。2時15分河原まで下る。両側からの山が迫り対岸まで数十メートルと思われるほどの狭く深い渓谷を先を争うようにして氷河からの水が落ちていく。再び紅葉した木々の中を歩く。

3時半大休止。さすがにポーター達も疲れの色が隠せない。顔の表情にゆとりが無くなってきた。3時55分沢越えの対岸小高いところにタルチョが見える。今晩のテント場が近いと云うことだ。沢を越えてからの登りは大した距離ではなかったが堪えた。ここまでの疲労が確かに足と気力に来ている。しばらく行くと再び平坦な場所に出る。耕作をしているというより牧畜中心の集落なのだろう。4時15分トレイルの右手にある一軒家の庭先がテント場だ(ギャブラ=2730M)。だだっ広い広場にぽつんとテントが張られた。調理場兼ポーター達の寝床は人家の奥にある小屋だ。テントだけが小屋から離れたところにあり、トレイル(人通り)に近いので一寸不気味さを感じる。

ご飯も終えてテントで寛いでいたらバッサンから声がかかった。人家にいる少年が高熱で息苦しくしている。薬はないか、とのことだった。少年は人家のベッドでダウンを羽織り、毛布にくるまって消耗しきってうつろな目を開けていた。彼のおじさんにあたるという付き添いによればシレ・ラで発熱し医者の居るところに下りるところとか。ダワさんがいないので意思の疎通は片言の英語だけ。症状の確認も定かではなく不安になったが、高熱、息苦しい、症状への対処療法として抗生物質、副腎皮質ホルモンのリンデロン、解熱剤を渡し、飲用方法を何度も確認して手渡す。あと高熱での脱水を避けるためポカリスエットの粉末をお湯に溶かし呑んで貰う。彼は美味しそうに呑んでくれた。何とかどれかの薬が効いてくれればと祈って部屋を去る。


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。