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⑨ヒマラヤトレッキング ランタン谷とコサインクンド   [ヒマラヤ・ランタンリルン]

12月3日(水)
トロゥーシャブルからラウルビナヤク(+1630m)

尾根に沿って街道が走り集落が連なっている。街道から一段低い所にロッジ・ホテルイブニングビューがある。その街道を右手に尾根を下ればシャブルベシの町に続く。左手に行けば今日の目的地のラウルビナヤクに至る。ロッジの女将さんと別れて出発だ。町中を進むとY字になって道が分かれている。その分岐点には水場があり、多くの村人が水を求めて三々五々来ては帰っていく。水を使って回転させているマニ車もある。

分岐点を右にとり左手に果樹園を見ながらいよいよ登坂だ。既に周囲は人家がまばらとなる。暫くはきつい登坂だ。道もいくつかに分かれていてガイドがいないとうっかりしてしまう。でも、このあたりなら少なくとも住民がいるので安心だが。
樹林帯の中を一歩一歩喘ぎながら登る。歩き始めで調子が出る迄は九十九折りの登りはきつい。息が上がってしまう。暑くはないが風も通らず汗が出てくる。先ずは自分のペースをわきまえて前進だ。30分ほどで村を一望できるチョウタラ(道端に歩行者が腰掛けられるようになっている石を積み)がある。
ポーター達は無邪気に自由気儘なルートを探しては早足に先を行く。さすがに山岳部族・若者のタフさを見せつけられたけれど、若いからやむを得ないだろうが、自分に余裕が無い時には多少苛つく現象だ。どんどん標高を稼ぐ。ラウルビナヤクには途中から別れて直登するルートもあるが、登りに使うには負荷が大きいのと道が分かり難いこともあってシンゴンパ経由が一般的だそうだ。さらに1時間進むと尾根に出てそこには茶店がある。ヂュルサガン(2660m)だ。ここからの視界は最高だ。後ろを振り返ると右手にはランタンリルンⅡからランタンリルンへとつながるランタンヒマールの山々が手に取るように視界に入る。この時間だと水蒸気も上がってないのですっきりとした凛々しい姿は印象的だ。

ここで一休み。思いっきり写真を撮りまくる。ここからの登りは稜線に沿ったトレイルだ。なだらかな登りになる。高い樹林帯、苔むした足下を一歩一歩前進だ。左手の大木の幹の間からランタンの山々が美しい。木の間隠れに見える。樹林帯を2時間程登ると平坦な開けた場所に出た。そこはポプラン(3,210m)だ。2軒の小屋が並んでいる。ヘッドバンドや手袋など土産物が無造作に並べられている。ここの雰囲気は南アルプスとか奥武蔵の山を歩いているような感じか。行き交う人々は全くない。ここではキャラバンと出会うこともない。樹林帯の中を一歩一歩喘ぎながら登る。
ここはまさに山奥、どこかへ通じる街道筋ではないからだ。ポプランは交通の要所。そこから右手に下るとブラバルを経由してドウンチェに至るルートと左手のルートを取るとラウルビナヤクへ至る道だ。遙か右手眼下にはかすんでドウンチェの集落が見える。ここからも樹林帯の中を先に進む。せせらぎが流れている、ウエットな環境に苔むした場所もあり、キノコ類も育つような環境。ガイドによればマッシュルームが採れるエリアだそうだ。マッシュルームを材料にした昼ご飯でも挑戦してみたい。樹林帯が開けた頃、1時間ほど歩いたか昼前にシンゴンパ(チャンダリバリ=3330m)に着く。数件のロッジが道に沿って両側に建っている。我々は右手にあるロッジに入る。

昼の休みを取っている間に俄に天候が急変した。一気にガスがかかり周囲を見通すことが出来ない。これから先の不安を抱えながら、先ずは腹ごしらえ。早速当地名産と言われるマッシュルームの有無を聞く。幸い有るとの返事だったのでマッシュルーム入りの焼きめしとスープを頼む。食堂にあるストーブに手をかざしたりして暖を取る。チャを飲んだり、雑談をしているうちに食事の用意が出来る。期待した焼きめしを見るといわゆるマッシュルームとは似て似ざるものだ。黒くて小さいし、肉厚がない。口に入れてみたが、予想以上に美味しい。山に入ってポテトと並ぶ感激だ。その土地らしいものを口にすることが無く、どこに行っても同じメニューだからここならではの素材は嬉しいこと。変な話だが、どこでもメニューは印刷した共通のもの。後は料金だけを手書きしているだけだ。そんなことにここで気が付いた。マッシュルームが気に入ったので買い求めようとしたが残念ながら断られた。きっと貴重品なのだろう。我々はここに泊まるわけではないが、表示を見たら泊まるのはご自由に、出発時にご自由に宿泊料を決めて箱に入れくれればいい、と書いてある。一寸不思議な気分だ。
雨に備えて雨具を身につけて1時過ぎて出発だ。なだらかな道に沿って集落があり、その先左手にゴンパがあった。ゴンパは小さく、鍵がかかっている。これからの幸運を祈って先に進む。なだらかな登りを霧雨が降り続く中前進だ。一寸腹の具合が気になる。音を立てて雨が降るわけではないが、霧が顔を伝わってなんとなく全身がじっとりと濡れてくる気分だ。幸いしばらくすると霧も晴れて徐々に視界がきいてくる。
残念ながら出会うことがなかったが、このエリアはレッドパンダのサンクチュアリーになっているそうだ。周囲の樹林もだんだん背丈が低く、疎らになってきた。気が付くとガスも上がり、視界がきき始めていた。平坦な空間が開けた所がチャランパティ(3650m)だ。ここで久しぶりに人と出会う。若い現地人のカップルだ。仲むつまじい二人はカメラに気が付いて是非撮って欲しいとせびる。喜んで頼みを聞く。今回に限らないが液晶に映し出される自分たちの姿に驚愕し、歓喜する。けっしてそれが彼らの手元に届くはず無いのだがそれでも嬉しいようだ。ここで一休み。すっかり雲も切れ明日向かうコサインクンドに向かう尾根状のルートが視界にはいる。

その中腹に今日の目的地であるラウルビナヤクの小屋も見える。気が遠くなるような彼方だが、目的地が確認できるのは安心だ。数軒のバティがあって、ヒマラヤらしいおみやげ、バンダナやスカ-フ、手袋、セーターなどなどを売っている。
あと標高差約300mの登りだ。丁度北アルプスの東鎌尾根の先に槍があるような景観。目に見えるのは安心感を与えるが、登る身になると苦痛でもある。まだまだ先があるのが分かるので精神的にプレッシャーになるからだ。ここまで来ると樹林帯はすっかり影を潜め、岩肌と背丈ほどの低草木になる。九十九折りで一歩一歩足を進める。足は重いしやはり高山での運動能力限界なのか身体全身が重い。思うように足が進まない。既に夕陽が傾きかけたころ、ラウルビナヤク(3920m)の一番下にあるホテルマウントレストに着く。ここが今晩の宿だ。シンゴンパの悪天が嘘のようにここでは天空に雲一つ無く眼下には綿のように雲海が敷き詰められている。なにしろ素晴らしい景色に圧倒される。左手にはランタンの山々が夕陽を浴びて赤く染まって美しい。左に目を回すとチベットの山々、さらに後ろ、日の落ちる方向にはマナスルヒマールとその左肩奥に小さくアンナプルナ山群が雲を突き破って聳え立っている。天国のようなこの景観、ヒマラヤでも最も美しいビューの一つと言われている。ソルクーンブ(エベレストエリア)のような圧倒する迫力では負けるが、この広がりはなんと言っても素晴らしい。270°の展望をしばらく静かに満喫した。そしてマナスルヒマールの後ろに太陽が落ちても残照に照らされた景観は違った趣をもって美しい。

ロッジは多くの外人トレッカーが既にチェックインしていた。今までほとんどトレッカーとは行き交わなかったのに、ここまで来るとトレッカーが数少ないロッジに集中するからだろう。トレッカーの姿が目に付く。二階建てで2階の中央部、下からの煙突が部屋を通過する所を選ぶ。煙突一本で暖を取れるほどの効果を期待できないのは分かっているが、いざとなったら煙突に手をかざして暖を取ったり、少しでも暖かいものがあるのは有り難い。2階にはテラスがあり、そこからランタンを鑑賞する事が出来る。
日が落ちると一気に冷え込んできた。手がかじかむし、吐く息も白い。さすがにここは約4000mの高山だ。そして高山特有の息苦しい感じも出てきた。今晩熟睡できるのかが心配になった。
夕飯を取って部屋の外を見ると満天の星。星座の確認が出来ないほど全ての星が輝いていた。ここではロッジ以外には明かりを発する所もなく、数少ない明かりも懐中電灯ていどだ。パートナーはカメラを持ち出して深夜の山々を撮りまくっていた。


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