SSブログ

⑪ヒマラヤ・トレッキング(アンナプルナ・アラウンド)(2004年11月) [アンナプルナ]

11月16日 (火)  トロン・ペディからムクティナートへ

3時に起床。すでに部屋の外では会話をする声、足音が響きわたり早くも周囲は活気を帯びている。正直言ってヒマラヤのトレッキングは時間のゆとりを織り込んで動くし、酸素が薄いというハンディキャップ以外にはそれほど緊張する場面が少ない。むしろ日本の山岳を移動する方が緊張したことを思い出す。このトレッキングで初めて登山という実感が迫り緊張した気分になる。小屋を囲っている壁を越えて上空を風が通る音が気になるが、幸いロッジには風の影響はない。満天の星に感動するが、それを味わっている余裕はない。頭がフラフラする。高山の影響が出ているのだろう。トロン・パス越えがちょっと心配だ。食欲はないが無理矢理ハニートーストとコーヒーで軽くすませて4時には予定通り出発。

今日の行程は登り1040m下り1620mのハードなスケジュールだ。真っ暗な中ヘッドランプを頼りにダワさんの後に従う。つづら折れのガレ場の道をゆっくり一歩一歩喘ぎながら歩く。手もかじかみ、初めて手袋をつけダウンを着て歩く。牛歩のごとく足を進めて、1時間かけてトロン・ハイ・キャンプ(4800m)に辿り着く。そこでダトパニ(ネパール後でお湯のこと)を補給、小休止。 5時20分に出発。白み始めた空を仰ぎながらボチボチと歩く。6時05分右手にトロン・ピークが見え、正面には雪に覆われた白い山が見えたが、丁度その間にある鞍部がトロン・パスになるらしい。ここからは手前のリッジの陰で見ることは出来ない。 もう少しの我慢。この時間になると周囲の山々が綺麗に見えてくる。6時20分ハイケンのバッティに着く。息も絶え絶えだ。レモンティを飲んで元気を回復。40分に出発、足は重い。7時10分太陽が東側稜線の上に昇り、一気に明るみを増す。日の出側のリッジが反対側の稜線にその影を映している。 7時15分小休止。ダワさんの持ってきたテルモスに入った紅茶をもらう。25分出発。8時正面にはためくタルチョーが目に入る。

そこが今回のトレッキングの最高地点、トロン・パスだ。8時10分トロン・パス(5416m)の上に立つ。パスは広がりのある平坦な空間だ。タルチョが翩翻とはためいている。そして石を積み上げたバッティがある。しかし身体はいうことを聞かない。標高5500mとなれば酸素は平地の1/2だ。フラフラしながら三脚を出して写真を撮りまくる。アンナプルナ、ガンガプルナ、トロン・ピーク、ヤクガワカング、カトゥンカングが一望できる。ただ、空気が薄いという事以外にはフラットな地形のためか高度感が無く迫力はさほど無く、期待はずれだ。景観では前回訪れたランタン・リルンとかラウルビナヤクからの眺望の方が遙かに迫力があるし、美しい。一言で言えばここの景観にはポイントがないと言うことだ。

さすがに一寸動くだけでも息が上がる。今日は強風の前兆を感じるものの、さして気になるほど風は強くない。峠越えはしばしば雪の世界になるらしい。そしてそのために引き返さざるを得ない事もあるそうだ。その上普段でも正午過ぎると強風が吹き荒れて行動不能になる事がしばしばとか。幸い今回は雪の吹きだまりはあったものの歩行困難なルートではなかったし風もない。 8時35分出発する。後日談だが、日本に帰ってからマナンで会ったカメラマンと思い出話をする機会があったが、彼は我々よりゆっくりした行程で4日後にトロン・パスを通過したそうだ。その時には雪が積もり、しかも天候も悪く視界不良でガイドの案内が無いと下山出来無いような悪条件だったと聞いた。改めて運の良さを感じた。

この先のムクチナートは今までのマルシャンディ川の緑と滝とは違って岩と砂だけの土色の殺風景なチベット的世界になるらしい。ここからの下りは雪が積もっていて下山には慎重をきす。 トレッキング・シューズなので凍った雪道はスリップしやすい。トレッカー各人がそれぞれの判断で道を選んでトレイルがあちこちにある。さいわい滑落してもどこかで止まると思えるので安心だが、慎重に進む。 9時25分、高度障害による胃の不快感は解決したもののフラフラ感は未だ残っている。ストックはこのような状況ではバランスを維持するのに好都合だ。バランスを失っても支えることが出来るのが良い。 下り下りの連続は足には負担だ。9時50分陽も昇り、小休止。身体が温まったのでダウンを脱ぐ。10時35分ゆっくりの休憩。トロン・ペディで買い求めたシナモンロールやオレンジを頬張る。11時20分テディのバッティに着く。

11時35分出発。ここまで下りると緊張する場面もなく、ひたすら下るだけの苦痛に耐えるだけだ。12時平坦な景観の良いところで休む。そこからはムクチナートの町が、そしてその左前方の稜線の後ろに氷壁を抱えたダウラギリの美しい山容が見える。

左手にはニルギルの山群が、そしてさらにその左手稜線の上にティリチョー・ピークが覗いている。右手には殺伐とした砂と土だけの穏やかな山が横たわっている。その後方にはムスタング地方がある。

ムスタングは以前ネパールに隣接する一国家として存在していたが、いまではネパールの一ディストリクトとして組み入れられた。今日でも特別区としてそこへの入場が制限されているエリアだ。外人の訪問を制限し、入域するには高額のフィーを払わなければならない。ブータンと並んで、鎖国的な秘境として一度は行ってみたい地域だ。そこの前領主はほとんどカトマンドゥで生活しているとのこと。

今日はムクティナート(3798m)泊まり。時間に余裕があるので寺院に寄ってから街に入ることになる。物々しい壁に囲まれている広大な境内だ。12時40分寺院の裏側の門から境内に入る。最初は聖水が迸る水の壁とその後ろにヒンドゥー教寺院ムクチナラヤンを拝観し、さらに回廊を少しずつ下りながら前進するとチベット教寺院ジョラムキ・ゴンパがある。


ここのゴンパには観音菩薩像の台座下に小さな囲いがあり、その中を覗くと仄暗い中に青白い炎(永久の神火=実は天然ガス)が静かに灯し続けているのが見える。それが信仰の対象になっている。ドネーションを献上し参拝した。4月から6月までが巡礼の季節。当地はネパール最大の聖地で、その時には遠くはインドからも巡礼が参拝に来るそうだ。ネパール国王もヘリコプターで参拝にくるらしい。そのためのわざわざヘリポートが寺院の隣に設けられていた。その時期をはずすと訪れる客は少なく静かな佇まい。僧侶も常駐せず、カトマンドゥに居住しているそうだ。1時10分寺院を出て街を目指して下る。10分も下ると街に入り,ACAPでチェックした後、ホテル(ロイヤルムスタングホテル)に入る。ベランダに出るとダウラギリが凛として聳え立っていうrのが見える。

今回のトレッキングで見た景観では最も美しく圧巻だ。しばらく部屋で昼寝をする。6時に夕飯。未だ高山の影響のせいか食欲がない。日本から持ってきたレトルト・リゾットを作ってもらう。辛うじて腹ごしらえをする。今日は早起きをしたのでそのまま直ぐに寝床に入る。ダワさんのボス、リンジさんの一帯と合流する。リンジさんがガイドしているオランダ人夫婦は無事にトロンパスを乗り越えられたと言うことだ。


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。