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⑩ヒマラヤ・トレッキング(アンナプルナ・アラウンド)(2004年11月) [アンナプルナ]

11月15日(月)  マナンからトロンペディへ

6時に起床。いよいよ高度への挑戦への第一歩になる。高度に適応できればいいのだが、これだけはここに来てしまった以上あとは運任せだ。今日の朝ご飯には日本から持ってきたレトルトにする。コックには不慣れなレトルトは火にかける時間とか作り方の説明が必要で意外と面倒な食材だった。自分たちで火を扱えれば簡単な話だが、通訳を通しての説明では手間がかかる。次回の食料計画に当たっては再考しなければならない。

7時の出発予定が結局7時半になる。しばらく町並みを歩き右手に道を求め、ゲートをくぐり抜けるとマナンの町とお別れだ。マルシャンディ川の対岸には昨日見た人工湖が眼下に見え、その上に目を転じるとガンガプルナ、アンナプルナⅢ、正面にはティリチョー・ピークが見える。しばらく行くと左手からコーラが流れ込んでいる。下の方にはティリチョー・ピークに向かう道が見える。そのトレイルは二つの川の出合いの間に落ち込んでいる尾根に沿ってティリチョー・ピークに延びている。その上部のテラス状の平坦地にロッジがある。ティリチョー・タル(湖)を経由してジョムソンに至るルートだ。このルートは全く小屋が無いためテント持ちでないと行けない。マニアックなコースだ。

我々は右手の斜面をトロン・パスを目指し登っていく。マナンからトロン・パスまでは2000mの高度差があり2日以上の日程になる。いよいよ今回のトレッキングの最大のヤマ場だ。さすがにここまで来るとマルシャンディ川の川幅も狭くなっている。 8時15分小休止。4人のイギリス人が元気よく追い越していった。空気が薄いので息が上がる。テンギ(3650m)の町を通り、9時10分グサン(3960m)に着く。

遙か眼下を見ると広くなった河原には石積みの小屋がある。夏場の羊の放牧小屋とか。たまたま野生の数頭のカモシカが草を食むでいる。余りにも遠いので辛うじて確認できただけだが。対岸の尾根の中腹にはティリチョー・ピークからジョムソンに直接向かうトレイルが見える。10時、深い渓谷に沿って対岸にある道がこちら側に合流する。 左手にはティリチョー・ピーク、そして渓谷の先にはトロン・ピーク、そしてその右手にはチュリュ山群が見える。

5分の小休止。10時55分進行方向正面にレダールの小屋が見える。5分も歩かないうちにヤク・カルカ(4110m)の入り口、朽ち果てた小屋が2軒、その前を通過。11時15分ヤク・カルカの中心にあるロッジでランチ。

ここまで来るとさすがにトレッカーしかいない。夏の放牧地としての利用はあっても通年で生活するには困難があってここは夏村ということだ。白人トレッカーが日だまりのテラスでのんびりとくつろいでいる。

突然、小屋の前が騒然となった。ヤクが縄を掛けられて引き立てられている。ヤクも異変を感じたのだろう。何人がかりで引っ張っても微動だにしない。その顛末を見ていたダワさんの話ではこれからそのヤクを殺す準備とか。どうもこのような殺気だった雰囲気は苦手だ。その現場から遠ざかる。昨晩食べたヤクとこの生きたヤクが二重写しになったりして気分が悪い。人間てげんきんなもので、このような同情と食欲が見事に使い分けられているが都合良いというか身勝手というか。

ここから後ろを振り返るとアンナプルナⅢが真正面に、その右手の稜線越えにガンガプルナが、左手にアンナプルナⅣが綺麗に見える。高山病の前兆か食欲が無い。この先のことも考えて無理をせずビスケットと紅茶だけを口にして、胃の負担を避けた。

12時15分ヤク・カルカを出発する。カルカとは牧場という意味だそうだ。12時50分小休止。前方には吊り橋があってそのずっと上に小屋がある。今日は幸い昼過ぎになっても強風は吹き荒れない。吊り橋を渡り1時過ぎにレダールに着く。ここからはアンナプルナはよく見えるがトロン・ピークは手前の山に遮られて見えなくなった。1時15分マルシャンディ川を対岸に向かって木の橋を渡る。しばらく急峻な登りの後掘っ立て小屋のバッティがある。2時半そこで一休み。

対岸の向こうにはプクン(6120m)が見える。2時50分に出発。暫くはなだらかな道だ。3時25分城壁に囲まれたような中にある門を潜って入場。「ここは?」とダワさんに尋ねたらなんとここがトロン・ペディ(4540m)だと言われた。想像していたより楽勝に拍子抜けだ。城壁に囲まれたようなロッジは強風対策の結果なのだろう。奥まったところに食堂と受付がある。すでに多くのトレッカーがくつろいでいる。部屋が決まり、荷物を置いて周囲を散策する。

回廊の外にはヤクの親子が僅かに残された枯れ草を食んでいた。この上にもロッジがあるそうだ。日が陰るとさすがに冷え込む。4時には食堂に入る。そこは人でごった返していて席を探すのさえ大変なぐらいの混み具合。しかも欧州の白人ばかりなのでまるでヨーロッパのアルプスにいる錯覚をしてしまう。 どうしてだろう、白人は分厚い本を読んだり、トランプに興じたり、人によってはCDを耳に当てている。自然界の音や空気を静かに味わうのが自分流の楽しみ方だが、文化の違いなんだろう、白人の過ごし方には違和感を感じる。 設備も小綺麗で床暖房なのかストーブが目に入らないのに暖かい。ここでリンギさん(ダワさんのボス)と一年ぶりに出会う。彼はオランダ人の老夫婦をロッジ泊まりの食事賄い付きのトレッキングを請け負っているそうだ。だからポーター以外にコックと食材運びのポーターも連れている。大名旅行みたいだ。

彼らは昨日トロン・パス越えを試みたが体調不良で戻り、明日再度挑戦するとか。ガイドブックによればこのパス越えにはヤク・カルカとかレダールでゆっくり高度順応をする人が多いとか。我々は一気越えなので一寸気がかり。明日無事に越えられるか。この小屋からは国際電話が可能。一分5ドルとか。おそらく衛星電話なのだろう。 5時には夕飯を取る。食事もスパゲッティやラザニエなどのイタリアンやステーキなどかなり凝った美味しそうな料理を出している。だが残念ながら食欲が無いので、ボイルドポテト3個とミルクコーヒーで済ませる。おそらく高山病の初期症状か少しずつ出ているのだろう。体力の低下にはなっていないのが救い。明日は3時半に食事、4時過ぎには出発しなければならない。トロン・パスは11時以降になると強風で通過が困難なこともあるので、ほとんどのトレッカーは早朝の出発を目指す。 食堂で身体を温めた勢いで部屋に帰り、そのままシュラフに潜り込む。


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