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⑤ヒマラヤ・トレッキング(アンナプルナ・アラウンド)(2004年11月) [アンナプルナ]

11月10日(水)  ゲルムからタルへ
街道筋に面しているので朝早くから人の動きが喧噪となって伝わってくる。6時に起きて散策をする。暗闇を鈴の音を鳴らしながらポニー・キャラバンが通り過ぎていく。鞍の両側にそれぞれ30kgぐらいの荷物を積んでいるが、運搬費用は一日350ルピーとか。村落のある右岸はなだらかな傾斜地では耕作地が拡がっているが、対岸は急峻な斜面で農耕には向いていない。

天空には朝日が差し込んでいるが谷間にあるここは未だ薄暗い。ロッジのご主人は今日の教育材料を探しているのか必死に雑音混じりの携帯ラジオを音源を探して向きを変えながら聞き入っている。昔の日本もそんな時代があったと懐かしんだ。アンテナにコードを付けて天井に伸ばし必死に電波を探し求めていた。 7時には朝ご飯を終え荷支度。ダワさんが最終的に荷物の確認をして忘れ物のチェックをする。毎日ザックから荷物を出しては、パッキングする連続だから忘れ物が一番心配だ。7時半出発する。天気は上々だが少しばかり雲もある。トレッキングには全く支障は無さそう。

マルシャンディ川の対岸に吊り橋を渡る。対岸の橋のたもとにはシャンゲの街がある。ゲルムとは目と鼻の先。川の対岸に対峙している関係だが街の規模はシャンゲの方が大きい。一般的なトレッキングではシャンゲに泊まっているようだ。

吊り橋の左側に2段に別れた滝が落ちている。なかなかスケールの大きい滝だ。7時45分シャンゲに入る。川を挟んで広々とした開放的な景色から一気に両側の谷が迫って渓谷らしい景観となる。8時15分シュリチャウの中心地に入る。ガイドブックによれば対岸に温泉があると書いてある。8時45分ジャガットの街の入り口で小休止。9時に出発して25分には街の中心部を通過。ジャガット(1330m)は大きな街で富んだ土地の雰囲気を漂わせている。9時30分街の出口に近いところで一休み。 50分に出発。深い渓谷沿いのトレッキングはとても楽しい。しばらくすると左側に何段にも連なった滝がマルシャンディ川に向かって落ちている。素晴らしい景色だ。

左岸の切り立った崖を一人だけ歩ける幅しかない道を辛うじて歩いていくと、前方に数人の青年現地人がたむろしていた。突然ダワさんに彼らが話しかける。咄嗟のことで理解が出来なかったが予想していたマオイスト達(毛沢東派反政府軍)だった。よく見ると一人だけは小銃を抱えていた。しばらくダワさんと彼らの交渉が続き、その結末は一人当たり900ルピーのドネーションを要求された。事前にドネーションを想定して相当額だけ別にしていたが小金がなく、500ルピー札2枚の組み合わせしかなかったので、全部取り上げられる覚悟で渡した。しかし予想に反してきちんと100ルピーのお釣りが帰ってきた。時計を見ると10時10分頃の話だ。這々の体でその場を去り10分後に休憩を取る。ダワさんにその経緯を確認したところ、ドネーションには一応の根拠があって、日本人であるということでトレッキング1日当たり100ルピーでトレッキング日数をかけた金額が総計になっているとのことだった。実は計算根拠の9日は実際より短い申告であったが、ダワさんの咄嗟の機転で通過可能な最低限の金額を押さえて決めた水準だった。しかもビックリしたことに、しっかりと領収書を発行してくれたこと。それを持って行けば他地区で別のマオイストに出会ったときには通行証になると聞いたが半信半疑だ。それを後で確認機会する事になるのだが。

10時50分クムチェラムダに着く。右手にはクムチェチャンガの滝が見事に落ちている。10時50分チャムジェ(1,410m)の街に着く。ここでランチを取る。ここで食べたポテトは格別美味しかった。ランタンに行ったときに食べた小さく黄金色の美味しいポテトに比べることが出来る。日射しは初冬とは思えないほど強く、日だまりで椅子に座ってくつろいでいると肌がヒリヒリするほどだ。亜熱帯地方を改めて実感。

12時15分出発。再び渓谷沿いのトレイルを辿る。狭い渓谷に架かる吊り橋を渡って対岸に。渓谷は一層狭く対岸に手が届くのではと錯覚するほどだ。何しろヒマラヤでは日本的な渓谷とはスケールが違うわけだから、このような風景は珍しい。しばらく行くとサタレ(1,480m)の街を通過。1時05分シッタルダンダに着く。滝が落ち込んだり、四方から渓谷が流れ込み削られた深い谷が合流する姿は黒部下廊下の十字峡をスケールアップしたような雰囲気。1時40分タルベシ(1,590m)で小休止。

2時には出発。2時15分タルの街の入り口に立つ。狭い渓谷から急に開けた中洲状の開けた土地になったが、そこがタル(1,700m)の街。白い柱で囲ったゲートがありそれをくぐって街に入る。街の先には右手に大きな滝が落ちている。今日はここが宿泊地。タルはマナン・ディストリクトの最初の街だ。

グルン族が中心の町を辿ってきたのだが、グルン族は仏教徒であるもののシェルパ族とは違った信仰の形を持っているようで、外見的にはヒンズー教の影響を受け入れているようにも思える。仏教圏の象徴であるチョルテンやタルチョウ、マニ・ウオール(経文が彫られた石を積み上げた塚)が目に入らなかったのはそのせいかもしれない。

ロッジの作りは今までのエベレストやランタンに比べてレベルが高い。街道に沿って庭を持ち、そこには芝生が植えられている。街道に面して柵があり門がある。その理由は後で分かったのだが、街道にはひっきりなしにポニー・キャラバンが行き交うしその他の家畜が通るので、庭に入りこまれて芝生を食いちぎられるのを防ぐ目的があるためとか。このような景観は当地方の豊かさの証にもなっている気がする。昼下がりから少しずつ雲がかかってきた。明日の天気が気がかりだ。
道を挟んでハイハイやっとの子供達と話に夢中になっているその母親達がいる。井戸端会議はどこの国にも共通したシーンだ。芝生のある庭に置かれたテーブルを囲んでティーを飲む。さすがに雲がかかると肌寒い。


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