九大のN教授によれば医師不足の現象はネットワークの欠如にもあるという話を伺った。例えば奈良県で起きた出産のたらい回し事件をデータで分析すれば、県内の産科医数と正常出産数は決して医師不足にはなっていない、大学病院がもっと異常出産への対応拠点として明確な責任自覚することでここまで深刻な問題にならなくて済んだはず、との見解だ。確かに大学から医局員が散っていくまではこれほど医師不足が叫ばれることもなく、相対的に穏やかな中に医療が機能していた。だとすれば絶対数での不足はあったにしても今よりは問題を小さくできる可能性を示している。
絶対的な医師不足は今から頑張っても十年以上先にしか解決できないのだから、それまでの時間をどのように乗り越えていくのかが問われている今日、N教授の指摘から学ぶできものがあるのではないか。
地域ではいろいろ工夫されているようだ。基幹病院と地元医師会が一体となってネットワーク地域医療を支えているケース、大学病院並の医療の提供をモットーとしているクリニックの登場など、象徴的に医師不足の現象が起きている基幹病院の勤務医の負担を軽減する試みもされている。医師不足だけを声高に叫ぶばかりではなく、現状での医療資源を前提にして医師不足解決の道を早急に探らなければならない。