11月12日(木) レストデー


今日はレストデーなのでテシラプチャへのトレイルに沿って氷河に下るピークまで往復する。8時半に出発する。今日も天候には恵まれている。しばらくはモレーンを左手に、右手にせせらぎの間を縫って高度を上げていく。暫く行くと右手のせせらぎは地表下に潜り伏流水になる。



そのあともなだらかな登リが続き、トレイルは徐々にモレーンのガレのなかに、登リもきつくなる。気を許すと岩を覆う氷に足を滑らしてしまう。岩陰には雪も積もっている。朝方は風もなく指先が少々痛くなる程度の耐えられる寒さだ。左手眼下にはロルパ湖が視界に入る。進行方向前方ではロールワリン氷河が左手に向きを変えていく。テシラプチャ越のトレイルは左手に方向を変えたあとに氷河から離れて右手に進む。

10時にはトレイルのほぼ最高地点(4900M)に着く。この先は氷河に向かって下降になるので景観に変化がないのでここでゆっくりすることにする。

テシラプチャからターメまでのトレイルはトレッキングの難しさではシェルパニ越と並ぶ最難の一つと言われている。出来ればテシラプチャのトレイルを望みたかったのだが、今回は叶わなかったし、それを望むにはかなりの時間を要するということだった。

テルモスに入れた紅茶を飲む。思いっきり湯気が立ち上り熱いのに慌てて口に入れてしまう。嬉しい一瞬だ。

13時前にはキャンプに戻りランチをする。食欲も少しは戻ったようだ。お粥に餠を入れてもらう。

11月13日(金)  オマイツォを経てナに


今日はバリエーションルートになっているオマイツォを経由してナに下る行程だ。オマイツォへはナからは整備されたトレイルがあるが、ツォー・ロルパからはほとんど歩いた痕跡がない。ガイドはじめ全員が未経験のトレイルなので手探りの移動になる。

ガイドがガレの小屋でトレイルの確認をしに行った。そこには若い女性がいて、たまたまナに帰る予定だった。気立てのいい彼女が言うにはアブレーションバレーを3ヶ所越えるのでトレイルを探すのは難しい、と言われる。私が案内しましょう、ということになった。理由を尋ねるとアブレーションバレーを囲むモレーンは時時刻刻変化して歩きやすい場所が変わるとの事だった。


彼女は小屋の後始末もあるのであとから追いかけるよ、とのことで我々だけが先行する。ツォー・ロルパの湖尻までは登リのトレイルを下り、9時半湖尻から別れて対岸側に渡り、左手に下る。すでにガレ場の連続だ。最初は踏み跡らしき痕跡があってさほどの困難なく進める。その先は白っぽいガレの荒野然とした広大なアブレーションバレーを仕切るように幾つかのモレーンが見える。一つ目のアブレーションバレーはそれほど深くえぐれていないのでさほどの困難はなかった。反対側のモレーンをよじ登り、稜線上を上部に向かう。10時45分モレーンの上に立つ。

踏み跡もなくなり歩きやすいと思われるルートを選んで次のアブレーションバレーのトラバースルートを探る。
そこまでは全員三々五々好きなルートを選んで登っているのでばらばらになる。突然彼女から声がかかり、登りすぎているのでモレーンへの下り、登リの足場が脆く不安定なので戻るように警告される。


ここで彼女の歩くあとを追って続く。ところが彼女の足の早いこと、カモシカのごとく。軽々と跳ねるように谷底に向かって降り始めた。10時30分にモレーンの上に着く。

二つ目のアブレーションバレーを越えるにはさほどの苦労はなかったが、3つ目のアブレーションバレーには手こずった。モレーからの下りと反対側のモレーンへの登リは足を踏むたびにずり落ちて不安定だ。辛うじて手がかりになる石や枯れ草を頼りに四つん這いになってよじ登る。V字というよりU字状になっているからだ。


ここまでは道なき道を歩くトレイルでタフだったが、ここからはモレーンの上をナからの整備されたトレイルに沿って先を進めばいいので彼女の使命は終わった。
三々五々先に進む。後方にはヤンルンリが見える。左手にはチェキゴ、カン・ナチュゴ(6737M),右手前方にはドラナグ・リ(6802M)そこから右手にランダク(6240M)、パマルカ(6344M)、ラグムチェ(6552M)、アンゴレ(6938M)などが連なる。



稜線上を穏やかなトレイルを登る。1時過ぎに前方にタルチョーが翩翻とはばたきオマイツォの近づいた気配だ。さらに進むと小さなゴンパの先にオマイツォが視界に入る。


オマイツォの先すぐそばがチベット国境になる。稜線に囲まれた湖なので風の通り道になっていて午後でもあるので、冷たい風が吹き抜けていく。体感温度は強度に寒い。ここでランチとなる。冷えきったおにぎりとゆで卵。テルモスのコーヒーが冷えきった体の芯を温めてくれる。

湖岸に小さなゴンパがあってタルチョーが強風に煽られてバタバタとはためいている。オマイツォはブッディストにとって神聖な聖地であるだけでなく、ヒンズー教徒にとっても巡礼地として崇められている。ポーターはほとんどヒンズーだが、ガイドはじめリーダー格の人たちはブッディストなので、湖の先に進んで何やらお祈りをしてるようだ。体が清められたと言っていた。

じっとしていると寒さが堪えるので食事が終わったら早々に下山を開始する。小一時間は居ただろうか。ここからは整備されたトレイルの下山なので楽勝だ。一気呵成の下りは惰性で下るので、肉体的には負荷がかかる。膝に多少の痛みを感じて不安になる。3時にはロールワリンコーラの右岸に出る。広い川原状を渡渉をしたり、泥状になったぬかるみを先に進む。

往路で渡った橋の手前でメイントレイルに合流し、しばらくしてナに着く。ここでキャンプになる。