12月20日(土) ヌムへ

長いそしてアクシデントもあったトレッキングも歩いて移動するのは今日一日で終わりだ。今日は目の前を流れるオルンコーラの川面まで降りて再度同じ高度差を登り返してヌムに向かう。

そう言えばこのたびのネパール大地震で思い出したことがある。ダラカルカにキャンプした晩のことだ。翌朝起きたら地震がありましたね!と声をかけられた。実は私自身はテントでしかも熟睡していたからか全く気がつかなかったが、仲間達は番小屋に寝ていたので相当揺れたらしい。今から思えば先触れだったのかもしれない。

7時半頃に出発して、一気の下降になる。急峻な下りが緩やかな傾斜に変わり、耕作地が広がる。8時半ライ族の集落、ムンブンバのガオンに入った。雄鳥の見事な鳴き声が聞こえてくる。往路ではここで食事をした。そして美味しいバナナにありついたところ。今日もダワさんにお願いしてバナナを所望する。往路よりも疲労がたまっていることもあるのか一層美味しさを感じた。

一帯の棚田は日本を彷彿させる。稲の耕作をしているらしい。今はシーズンオフで刈り取られた穂の根っこだけだ。9時にはオルンコーラの川面だ。順調な下降だが、これからが登り返しの地獄の登りになる。

吊り橋を渡りヌムに向かって最後のトレッキング。最初のうちは樹林帯の日影だったが、しばらくすると太陽も高く日射しが直接肌を突き刺すようになった。

ロバのキャラバン隊がどんどん降りてくる。明日セドゥワで開催されるバザールを目指して荷揚げの一帯だ。それもひっきりなしなので避けては先に進む、その繰り返しになる。




耕作地が広がり、ガオンに入った。チョムラ・カルカに10時到着。ここで早いランチになる。農家の庭先を借りてドルチさんがすでに準備をしていた。

11時半最後の登りの開始。頑張ろう!急峻な九十九折りのトレイルを汗だくで進む。振り返ればセドゥワの集落が標高差がほとんどない感じで見える。ヌムもそう遠くはなさそうだ。12時半過ぎに到着する。

往路と同じロッジに泊まる。
寛いでいると青年が近づいてきた。彼は聾唖者だった。しかもロッジのご主人の話では幼少の頃このガオンに捨て子として置き去りにされたのを気の毒に思った素封家が面倒を見ているとのこと。その後は各家で代わる代わる面倒を見て貰い、その対価として手伝いなどをしているらしい。決して盗みとか無断飲食は一切しない彼なので住民との連帯が実現しているのだろう。心を洗われるような美談に清々しい気持ちになった。

夜には恒例の打ち上げだ。ドルチさんの丹精込めた料理に舌鼓を打ち、ケーキに入刀をして全員でシェアする。あとはジープで下りるだけ。感無量の最終日になった。