12月11日(木) ラングマーレで休養


今日も好天で朝日に焼けるチョムロン、ネパウが綺麗だ。だが、朝からコーラ沿いに風が吹き上げてくる。外に出ると肌寒い。今日は一日はじめての休養日で、シェルパニコル越えのために体力温存とギアの再度のチェック、それとテストをする。



ここでは急峻な壁がないのであくまでも使い方の復習だけになる。テント前に広がる傾斜地を利用してユマールの練習だ。予備用のザイルを岩に固定し垂らされたザイルの末端でハーネスを装着してユマールを掛ける。ハーネスは若い頃に経験していたので戸惑いはなかったが、ユマールは当時使ったことが無かった武器で操作は至って簡単、身体を安定させるには優れものだ。


二本のザイルを上下に固定しているので、途中で身体をビレーして次ぎのザイルにユマールを移動させる。ユマールがあると途中で疲労した場合でもザイルに身体を預けて休めるので楽だ。若い頃の岩登りでは経験出来無かったことだが。

12本爪のクランポンとプラスチック・ブーツを試す。ブーツはインナブーツを履いてから外側のブーツに差し込む。それにクランポンをつけて、再度上り下りのエクササイズ。下りにはエイトカンを使うが、これは若い頃に使ったものと変わりがないので困ることもなく使えた。

なんとかギアの使用には慣れたが、実際に岩場、氷、雪の中での実践にどこまで対応できるだろうか、多少の不安は残った。

午後は明日からの行程をもう一度確認をすることになった。時々筋雲が走りちょっと不安が走る。

実はここに来て知らなかった事実を突きつけられて困惑した。というのはシェルパニコル越えをするとその後は引き返せないことだ。6000m超のコルを3つ越えるのだが、どれも登りは急でも引き返すことは可能だが、コル越え後は懸垂下降になるので、降りてしまったら登り返せない。シェルパニコルの先では前進だけが我々にとって唯一の選択になる。天候の不順が続けば食料の補給も不可能なので長期滞留にも不安がある。

まずは好天に恵まれることが条件だということだ。万が一天候に不安要素がある場合にはマカルーBCから引き返すのが賢明とのガイド達の考えだ。最終的にはあなたの判断に任せるよ、と言われるのだが。

幸いこの数日は天候には恵まれているので幸運を願うばかりだ。明日が命運を分ける日になりそう。ダワさんから貰った首に掛けているラマの祈りを込められたお守りにすがるしかない。