8月10日(土)


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今日はドゥ・タラップを目指す。相変わらず霧のかかった天候だ。6時には牧童たちはゴートの群れを連れて草地に向かっていく。このカルカにはヤク、ナクも放牧されていてナクの乳を求めてすがりつく子供が愛らしい。子供から解放されたナクには年老いたおばあさんが乳搾りをしている。彼らのテントを訪ねる。ストーブはテント内を暖かく快適にしている。絞りたての乳で作ったチベタンティーをご馳走になる。


今日の進行方向にはチベットの山が見える。上部には新雪が彩りを添えている。7時半には出発する。なだらかなアップダウンを繰り返しながら、途中にはいくつかのカルカが点在していた。コーラを越すと一気の直登が始まる。8時40分にはリッジに出る。そこからはリッジに沿って高度を稼ぐ。9時15分バンジャンを通過する。さすがに手応え十分だ。

緩やかな下りが続き9時40分には小さなコーラをよぎりながら先に進む。ドルパの特徴は流れる水が透明で美しいこと。トレッキングで有名なヒマラヤの中央部から東部では氷河を源流にするのでどこでも白濁しているのと対照的だ。

ふたたび登に移り、いよいよ今日の一番の難関5420Mのジャルコイ・バンジャンを越さなければならない。10時半バンジャンが視界に入る。バンジャンを越えて馬を連れた現地の人が降りてきた。もう一踏ん張りだ。11時20分バンジャンに着く。この先で川口慧海が辿ったルートと分かれて左手の谷に沿って移動する。



         (珍しいブルーポピー)



今日は一日中不安定な天候で、日差しが出ることもあるが、曇り時々小雨だ。ジャルコイ・バンジャン(5420M)を越えるとふたたび小雨が降ってきた。しばらく降りるとポーターがホットジュースを持って登ってきた。さすがに2つのバンジャン越えだったので、この飲料は疲れた体にはカンフルだ。


ポーターは我々の荷物を背負って昼飯を準備しているところに足早に去った。今日はちょうどいい場所には水場がないので、おにぎりとバナナだ。ふたたび日差しが戻りさぁ昼飯を始めようとしたら大粒の雨になる。急に降り出した雨の中昼飯になったのでビニールのシートを頭にかぶりながら頬張る。いつものように食事を準備する予定だったら大変なことになっていた。不幸中の幸いと言うことだ。



なだらかな下りが続き、ふたたびコーラを徒渉することになる。幸い雨は上がり、前方にドゥ・ラの集落が視界に入る。はじめはドゥ・タラップのガオンではとホットしたのも一瞬、確認したらその手前のガオンだと言うことだった。トレイルはコーラに沿ってほとんど平坦になっているので肉体的には楽なはずだが、底だまりしている疲労が深く、想像以上に辛かった。ドゥ・ラの集落一帯はそれほど大きいガオンではなかったが、久しぶりに生活臭が漂い、コーラでは洗濯や野菜を洗ったり、子供たちが遊んでいる。耕作する平坦な土地もあって、収穫期を間近にした大麦の穂が大きく育っている。


この最後の1時間は平坦なのに足が重い。4時過ぎにはようやくドゥ・タラップ、今までみたガオンと比較すると圧倒的に大きい。クンブ地方(エベレスト)の中心がナムチェバザールなら、ここはアッパードルパのナムチェという事だ。



ふたたび音を立てて雨が降ってきたので早速テントに避難する。明日はレストデイなのでゆっくり休養をしよう。まだまだ先はあるのにさすがに不安がよぎる。ここでは行くにしても帰るにしても5000Mを超すバンジャンを越えて1週間は歩かないと人里にはたどり着けない。